頂を目指す二ノ姫V

□五分五分
1ページ/5ページ




「ぐおおおーっ!!」



「ふん!!」


乾は我武者羅にボールに食らいついていた
どんなボールもとにかく拾う
かつてない彼の姿に青学側は静まり返った


「乾が…





データテニスを捨てた…





思わず不二は声を零す
常に磨いてきた己の武器を捨てたことに呆気に取られていた


「ぬおおおおっ!!」

『(貞治……)』

「っおおおーっ!!ぬあっ!!」


激しい雄叫びをあげながら、自分の隙をつくボールに飛びかかかる
桜たちはその乾の姿に目を見開いていた


「あんな乾先輩見た事ねぇ……」

『凄い気迫……』

「ナ、ナイスファイト」

「あれが……データを捨てた乾のテニス」





「………やるじゃん」





その勢いのまま乾は同点に持ち込んだ
桜が腕を組んで、観察するよう乾を見つめる


『データテニスを捨てた今…
多分頭で考えるより先に身体が反応しているんでしょう
身体が今までの経験を覚えているんだわ…』

「ぬああああーっ!!」


乾の凄まじい気迫が込められたボールが柳のコートをかけた



「《ゲーム乾4−3!!》」



「よっしゃー逆転したぞ!!」

『(でも…これもいつまで持つか………
まぁ貞治は何かを考えてるみたいだけど…)』


思案気な桜をちらっと一瞥し、真田は重々しく口を開いた
その表情に動揺は無い


「さしずめデータに頼らず動物的カンでプレイしようと言う事だろうが
そんなデタラメな思いつきのテニスで…






我が立海大は倒せん!






その言葉通り、柳は動く
彼の実力はこんなものではない


「柳蓮二の勝率92%…」

「(スピード。そしてパワーが格段に上がった…!?)」

「柳蓮二の勝率94%…」

「(バカな!更に上がった!?)」


先程までとは全く違うその動きに乾は瞠目する
柳は表情を変えず、冷静にラケットを振る
足を動かす


「柳蓮二ノ勝率97%…否…





100%だ





決まったドロップショットに乾の膝がコートに落ちる
柳は肩で息をする幼馴染に冷淡に口を開く


「何だこれは?
お前の4年と2か月と15日はこんなものか…






あまり失望させるな……貞治






.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ