頂を目指す二ノ姫V
□五分五分
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「ぐおおおーっ!!」
「ふん!!」
乾は我武者羅にボールに食らいついていた
どんなボールもとにかく拾う
かつてない彼の姿に青学側は静まり返った
「乾が…
データテニスを捨てた…」
思わず不二は声を零す
常に磨いてきた己の武器を捨てたことに呆気に取られていた
「ぬおおおおっ!!」
『(貞治……)』
「っおおおーっ!!ぬあっ!!」
激しい雄叫びをあげながら、自分の隙をつくボールに飛びかかかる
桜たちはその乾の姿に目を見開いていた
「あんな乾先輩見た事ねぇ……」
『凄い気迫……』
「ナ、ナイスファイト」
「あれが……データを捨てた乾のテニス」
「………やるじゃん」
その勢いのまま乾は同点に持ち込んだ
桜が腕を組んで、観察するよう乾を見つめる
『データテニスを捨てた今…
多分頭で考えるより先に身体が反応しているんでしょう
身体が今までの経験を覚えているんだわ…』
「ぬああああーっ!!」
乾の凄まじい気迫が込められたボールが柳のコートをかけた
「《ゲーム乾4−3!!》」
「よっしゃー逆転したぞ!!」
『(でも…これもいつまで持つか………
まぁ貞治は何かを考えてるみたいだけど…)』
思案気な桜をちらっと一瞥し、真田は重々しく口を開いた
その表情に動揺は無い
「さしずめデータに頼らず動物的カンでプレイしようと言う事だろうが
そんなデタラメな思いつきのテニスで…
我が立海大は倒せん!」
その言葉通り、柳は動く
彼の実力はこんなものではない
「柳蓮二の勝率92%…」
「(スピード。そしてパワーが格段に上がった…!?)」
「柳蓮二の勝率94%…」
「(バカな!更に上がった!?)」
先程までとは全く違うその動きに乾は瞠目する
柳は表情を変えず、冷静にラケットを振る
足を動かす
「柳蓮二ノ勝率97%…否…
100%だ」
決まったドロップショットに乾の膝がコートに落ちる
柳は肩で息をする幼馴染に冷淡に口を開く
「何だこれは?
お前の4年と2か月と15日はこんなものか…
あまり失望させるな……貞治」
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