頂を目指す二ノ姫V

□リョーマがゆく
2ページ/8ページ




「あ、あれはっ!?」



「つあっ!!」



「お、俺のナックルサーブ…!?」


赤也の得意とするサーブを放つリョーマ
真田は感嘆するように軽く笑った


「ほう。意識的に「無我の境地」を扱えるとはな!!」


リョーマは力強く返されたボールを目で追った
そして今度は変則的にしゃがみ込むようなスライディングを繰り出す
それは山吹の亜久津の動き
ボールに回り込んだリョーマの次の動きに不二はハッとした


「そして裕太のツイストスピンショット……!?」

『そして今度は』

「ダンクスマッシュかよ!?」


流れるような技のオンパレード
先取点を奪ったのはリョーマだ

しかし桜の表情は翳った
多くの技を使う。それは何の気休めにもならない


『(…私は教えなかった……無我の境地の…弱点を……)』


だから気が晴れないのだろう
知っているのに言わなかったのだから

続いてリョーマは手塚の零式を繰り出す
コートを転がるボールに青学は活気づいた


「へへっ」

「(ほう…なかなか強い奴らと戦ってきたようだな)」


そこは真田も認めるべきところだった
しかしそれだけのことであり、真田にとってさしたる問題では無かった


「(―――だが俺は全国の様々な強者と戦い
お前の何倍も修羅場を潜って来たのだ
そしてそいつらは全て俺の前に平伏した





例外は無い。お前もだ!)」





リョーマのサーブをバックで返し、リョーマも果敢に返す
そのラリーの中、真田が動いた



「微温い」



『(ラケットが…そしてあの構え…………)』


桜は真田のその動きに息を止めた。そして











ボールが、リョーマの後方でバウンドした
だが、ボールは目で捉えられていない
そもそも、真田がラケットを振った瞬間さえ見えなかった

しかし、目の前にはラケットを振り抜いた状態の真田








「疾きこと風の如し」








『もう…出すのね…弦一郎』








「風林火山」








真田の試合ぶりを知っている立海は唖然とした
柳生は冷や汗を流す


「こ、こんなに早く出すのは初めてですよね…」

「それだけあの1年はキケンという事ナリ」


ジャッカルは生唾を飲み込み、仁王は淡々と言う
桜は、呆然とした様子の菊丸に息をついた
菊丸の動体視力を持ってしても、真田のスイングは見えなかったのだろう


『(風林火山の“風”は居合の発想からきたものだし…
その速度は常人の目に映るにはあまりにも早い…でも……)』


桜は巻藁を斬り倒す真田の姿を思い出した



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ