頂を目指す二ノ姫V

□リョーマがゆく
3ページ/8ページ




真田の究極奥義――『風林火山』

疾きこと『風』の如く

徐かなること『林』の如く

侵掠すること『火』の如く

動かざること『山』の如し








『それぞれ相手の最も得意な戦い方であえて叩き潰しにくる
真っ向勝負と言うのが彼のテニス哲学』

「しかしそれは圧倒的強さがあってこそ成り立つ戦い方だ
これが発動したら最後…」





相手は戦意すら失う





桜は変わる事の無い彼の戦い方に苦笑した


『(私も『林』やら『山』やら使われたなぁ
あの時は本当に大変だった…)』


若干遠い目をする
それほど真田との試合は過酷だった
柳は早々に風林火山を出した真田に険しい表情を浮かべる


「(全国前に摘むつもりか弦一郎――――)」


ラケットを止め、またもや『風』を繰り出した真田
しかし、リョーマは『風』を返した
柳は驚きの声をあげる


「弦一郎の見えないスイングを返したっ!?」

「ほう!」


リョーマは『風』の速さについていっていた
その動きには見覚えがある
地区大会決勝での、彼の動きだ

さらに、トップスピンとスライスが交互に放たれる
真田がボールを打とうと腕を振るが


「(何ぃ。腕の自由が!?)」



「《アーウトッ!!》」



真田の打ったボールはコートから大きく外れた
滅多にない真田のミスに驚愕が走る


「見たか今の………
トップスピンとスライスを交互に打たれてるとは思っていたが」

「ほんの一瞬真田の筋肉がそれによってマヒしたぜよ」


これも地区予選決勝で見た技だ
しかもこちらはリョーマが受けた技


「越前の奴
不動峰の神尾の走りと伊武のスポットを融合させて使いやがった!」


怒涛の攻めを見せるリョーマ
活気づくギャラリーとは反対に険しい表情になる桜
彼女だけまるで別の所に居るかのような温度差
誰もそれには気付かない


『(…………いつまで続くか…)』


真田もまた、リョーマの成長の速度に驚きを隠せない


「(進化している…それも急激に)」


しかもリョーマがラケットを構えたと思えば
ボールがコートに叩きつけられた音が真田の耳に届いた
目の前には、いつの間にかラケットを振り抜いているリョーマの姿


「アイツ、真田副部長の風林火山を…!?」

「疾きこと風の如く…だっけ?」



「《ゲーム越前1−0…》」





「あの1年、皇帝真田から1ゲーム奪っちまったぁ――――――――っ!!!」





真田はラケットを握った
どこから来るかわからないこの不可思議な思いを押し込めるように
目の前の無謀なチャレンジャーただ1人に視線を向ける


「(こいつ…限界はいったい何処だ







『無我の境地』とはこれ程の……)」







「You still have lots more to work on…(まだまだだね)」








.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ