頂を目指す二ノ姫V

□サムライの血
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「うおおーっアイツどーいう気だ!?」





「勝つ気さ!!」





「よっしゃあーゴー越前!!」





「いけェおチビ!!」





熱の入った応援を背に
桜は、手塚からかかってきた電話を思い出した
彼は桜にこう言った















「“今回のシングルス1を、もう決めたか?”」

『いいえ。まだよ』


実際に決めかねていた
出てくるのは確実に真田だろう
あてるとすれば不二しかいない
だが、本音を言えばリョーマの方がいいのではないか
そう考えていた
今のリョーマに全国を戦い抜けるかは分からない
それは実力の問題であり、彼の闘志の問題でもある
ならばここで真田とあたっておく事は、これからのリョーマに必要なのではないかと

すると、黙った桜に手塚が静かに言った


「“ならば、シングルス1を越前にしてくれないか”」

『!!』


自分の考えが読まれたのかと思うほど、手塚の言葉はタイミングが良かった
桜は携帯をギュッと握る


『……私も同じことを考えていたわ』

「“…!そうか…”」

『ええ………何故か聞いてもいい?』

「“……お前も見ただろう
越前と高架下のコートで試合をしたのを”」

『ええ』


手塚が青学の柱を託した時のことだ
桜は次の言葉を待った


「“こんなことを言えば笑うかもしれないが…
越前と試合をした時
奴の中にサムライの様なものを見た”」

『サムライ…』

「“ああ。奴の奥底には計り知れない程巨大な何かが潜んでいる!
だからこそ全力でアイツを倒した。完膚無きまでに”」


息を切らしてコートに膝をつくリョーマを見れば一目瞭然だ
零式ドロップまで使っていたこともある


「“そうでもしなくては奴の扉は閉じたままだと感じたんだ


奴は誰かを倒したい


ただそれだけの為にテニスをやっていた
それではその相手を倒した後奴にはいったい何が残るのか
だから俺は…”」





『サムライ南次郎よ…
それがリョーマの父親で、恐らく目標ね』






すると手塚から返って来たのは納得の声だった
感づいていたのだ
桜は思わず微笑んだ


「“なおさら奴が全国で勝ち進むその為には、真田と当たっておくべきだ”」

『…そうね………』


その断言に桜も頷いた
分かっている
それが最良の選択であり、彼女が取らなければならない途路(ミチ)


『たとえその結果がどうであっても…』

「“……そうだ”」


淀みない手塚の考えは、桜も考えていた事で、彼女が辿りたい途路だった
でも、それでも色々考えてしまったのは彼らと長い時を過ごしたからか
歪みを恐れる弱い心のせいか






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