頂を目指す二ノ姫V
□サムライの血
1ページ/8ページ
息も絶え絶えな状況で、リョーマは果敢にも挑み続ける
ドライブBが炸裂した
「《ゲーム越前2−5!!》」
「おおーっ凄ぇよ越前っ!!」
「『風林火山』を封じればもうこっちのもんじゃん!」
ガッツポーズでそう言う菊丸
しかしリョーマの身体は感じ取っていた
一筋縄ではいかない
一瞬でも攻撃の手を休めたら、一気に試合を決められてしまうであろう事に
「(でも……やってやるっ!!)」
かなりの疲労のはずだ
それでも、リョーマは止まらない
だが立海も真田の勝利を信じていた
「残念ながら『風林火山』を封じたからといって真田くんの勝利は変わりません」
眼鏡のブリッジを押し上げながら柳生が言う
だが、焦りが見えているのも事実だった
しかし、どんなに周りが変化しても真田は変わらない
「(この俺に臆する事なく真っ向勝負を挑んでくるとは
だが遅すぎたな…
いつまでもそのハイテンションが続くワケがない
そのハイテンションが途切れた時こそが
お前の最期!!)」
しかし、一向にリョーマのテンションは切れない
ドライブBを連続で繰り出し真田のコートを抉る。何より
「(何だ…打球のスピードが増してきている!?)」
目を瞠らずにいられない
ここにきてスピードが上がるなど考えられなかった
過去にリョーマと対戦した事のある日吉は険しい表情で呟いた
「チビ助を甘くみてたら痛い目にあうぜ
なんせ…これが奴のベストなテンションなんだからよ」
「《ゲーム越前3−5!!》」
さらにもう1ゲームを取ったリョーマ
真田は憮然とリョーマを見た
「(試合の後半から打球のスピードが上がるなんて世界のトッププロの芸当だ
何なんだこの1年は……明らかに他の奴等とは違う何かが…)」
そして真田は、一瞬目を疑った
「(何だ………今のは!?)」
一瞬リョーマの姿に、黒い着物を着たサムライが被って見えた
しかも、そのサムライの持つ刀が、緑色の光を放っていたのだ
瞬きの一瞬で消えたサムライ
目の前には、不敵な笑みの1年
「(………越前…リョーマか…)」
――真田の五感もまた感じ取っていた
この1年は今、摘んでおかねばならないと
『(………思い出すわね…)』
桜はリョーマと真田のその様子に2か月前のことを思い出した
それは、手塚と越前の高架下での試合
「いよいよ始まるな」
『ええ』
大石とともに影に隠れていた桜は向き合う2人を横目で見た
手塚国光と越前リョーマである
「始めるか?」
「いいっスよ」
手塚からのサーブ
ベースラインに下がった手塚はリョーマに言う
「遠慮はいらない。全力で来い越前!」
「言われなくてもそのつもりっスよ」
シュドッ
リョーマが言いきった直後、ボールが凄まじい速度でコートに打ちこまれた
いきなりの力強いサーブにリョーマは笑った
.