頂を目指す二ノ姫V

□人間らしさ
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「《第××回全国中学生テニストーナメント
関東大会団体男子の部の結果…および全国大会出場の6校を発表します》」



激闘を制した各中学生達
最初に呼ばれたのは、3位決定戦で六角中を破った



「《不動峰中(東京)!!》」



賞状を受け取る橘
その後ろ姿を見つめる後輩達
桜は彼らの目に凄まじい闘志を感じほぅ、と息を吐いた


『(…彼らはまだ、上って来るわね………)』


ただ、どこまで上れるかは彼ら次第ではあるが



「《次に準優勝…立海大附属中(神奈川)!!》」



しかし、名前を呼ばれたにもかかわらず、真田は動かなかった
硬い表情で呼び出しを切り捨てる





「結構!我々の求めるものは優勝のみ
それ以外に価値は無い!」






関東大会16連勝を狙っていただけに
今回の結果は到底満足のいくものではない
それに、幸村の事が心配なのだろう
表情が強張っている彼らを桜は遠くを見るように見つめた
そして





「《関東大会優勝は…





青春学園中等部(東京)!!》」





歴史を変えた、瞬間だ
桜は自信に溢れた彼らを見ていられなくて
だが焼きつけたくて
目をスッと細めた
鼓動は収まらない



「《なお4位の六角中、5位の山吹中、6位の緑山中までが全国へ駒を進めます
全国大会での関東勢の活躍を祈りつつこの大会の―――…》」





『…………あら?』


ふと視線を感じて振り返る
そこに立っていたのはゲタを履いた長身の男





『(……………あれは……九州二翼の…)』





「(……………見つけたばい……)」





一瞬視線が合うと、彼は長い脚を動かして遠ざかっていった
ゆらり、と消えていく彼に桜はチラッと不動峰を見る


『(………橘くんを見に来たのかしら……
彼の事だから偵察とかではないんでしょうけど…)』


元々橘とともに九州の獅子楽中テニス部に在籍しており
今では大阪、四天宝寺のテニス部員

千歳千里


『(………久し振りに彼に連絡してみようかしら)』


動き出した影に、桜はフッと息をついた






















「………桜」

『………弦一郎……』


撤収作業の最中、桜は真田と遭遇した
もう帰るのだろう。制服だった
真田は一瞬目を伏せて、しかし桜を真っ直ぐに見て言った


「…これから幸村の…病院に行く。お前は」

『…やめておくわ』


真田の言葉を遮って、桜は目尻を下げた
はっきりとした声音に驚く間もなく真田はその表情に胸を突かれた
桜の悲しげな瞳が揺れる






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