頂を目指す二ノ姫W

□1日目@
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合宿当日
桜は青学の校門前で大荷持を抱えて待っていた
時間は現在5時30分。隣には眠そうな栞の姿


「桜ちゃ〜ん
これ早く来すぎたんじゃな〜い〜?
大石くんもいないよ〜」

『そりゃあ集合時間は6時だもの』

「えぇっ!?じゃあもう少し遅くても良かったじゃん!!」

『それはそうだけど
私は残って練習する皆のドリンクとか用意しておかなきゃいけなかったし
それにまとめ役を任されてるし』

「ありえない…眠い…………いや、そうでもないかな?」

『どっちよ』


そもそも、桜はともかく栞はもう少し遅くても良かったのだ
なのに桜についてきて、こんな時間に学校にやって来たのだ

いや、ついてきた、というか、昨日から桜の家に泊まり込んでいて
そのままの流れで桜の準備にあわせて栞も準備をしていた
集合時間を知らなかったのは、桜と一緒に行けばいいと思ったからだろう
だがそれが裏目に出る結果となったようだ

苦笑した桜はふと上を見上げた
零れそうになる思いを押し込めるように目を瞑る


『昨日……行ったわね……………』

「…………はい。そうですね。浦原が言っていました」


栞も沈んだ声を発した

運命を変えに、世界を渡った者がいる
近くて遠い場所で


「……ようやく御対面ですね」

『そうね…………』


彼女が姿を現した時、彼らはどう思うだろうか
怒るか、憎むか。それとも

桜は頭を振って雰囲気と表情を変えた


『……そうそう
この合宿のマネージャーは私と栞ちゃんをいれて5人だからね』

「………5人!?5人であの人数……うわぁ……」


同じように、沈んだ空気を変えるように高い声を出した
栞は考えたくない、と表情を歪ませる


「んで、誰が来るの?」

『青学からスミレちゃんの孫の竜崎桜乃ちゃんと友達の小坂田朋香ちゃん
それから不動峰の部長の妹の杏ちゃんよ
つまり、私達が最高学年ってこと』

「………この合宿参加者の誰より年齢高いでしょ〜私達」


ぼそっとした栞の呟きは、到着した大石の声にかき消された
大石は爽やかな顔で笑う。全く眠そうに見えない
青学の部室の鍵当番を桜で交代でしているだけあって朝には強いようだ


「桜!!それに初瀬!!早いな!!」

「おー大石くんじゃーん!!君も充分早いよ!!」

『おはよう。秀』


大石は荷物を下ろしながら時計を見た
まだ5時40分だ


「20分前行動とか尊敬するよ〜」

「って初瀬も来てるじゃないか」

「私は桜ちゃんに引きずられてここまで来たからね〜
ホント、自分でもビックリ」

『誰も引きずってません。栞ちゃんが私にひっついてきたんでしょ?』


桜と栞のやり取りに大石は面白そうに笑う


「えっと、ここから電車に乗るんだったかい?」

『ええ。ホントは現地集合にしようと思ったんだけどね
英二とリョーマが危なそうだったし
もし現地で集まらなくて慌てたら嫌だったから学校集合にしたのよ』

「桜ちゃんって結構心配性だよね〜ま、いいけどさ
でも合同合宿が氷帝主催ならバスぐらい出してくれてもいいのに」

『都内なんだから別にいらないでしょう
文句言わないの』


軽く咎めるように言うと、栞はぶーっと口を尖らせた
これがまさか死神だとは夢にも思わない
そもそも、性格まで若干変わっている

大石は先程から笑いっぱなしだ


「ハハッ。ホント、仲良いな
それに桜にそんな風に言えるのは初瀬くらいだよ」

「なんか私、他のクラスで勇者って言われてるんだ!
あの桜ちゃんに軽口聞ける女子っていないから」

『あの…ってどのよ…』

「あのだよあの」


美人な青学のマネージャー兼コーチ
完全無欠な生徒会長でテニス部部長の幼馴染であり
彼が逆らえない唯一と言ってもいいほどの人
彼女自身も優秀で教師の中にも頭が上がらない人がちらほら
ちなみにお姉様、と下級生からは慕われている


「“あの”桜ちゃん」

『………………』


桜は唖然とした
他人の事には鋭いが、自分の事には無頓着なのだ
初めて聞く自分の噂に頭痛がした
ついでに今聞いたことを全て聞かなかったことにした
知らない方が幸せな事もある



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