頂を目指す二ノ姫W

□1日目C
1ページ/5ページ




午後からもひたすら指導だった
始まった当初は杏を手伝ってドリンクの準備を行い
午前中使ったタオルを洗濯機にかけ、日光の元干していた
だがその後は試合をつぶさに見て気になったところを解消する

午前中は比較的不動峰を多く見ていたが午後は反対に六角メインだった


「桜。このバックボレーの時のフォームなんだけど」

『そうね。ちょっと要らない所にまで力が入っているように見えるわね
背筋を鍛えれば解消されるかも』


そう言えば佐伯はなるほど、と爽やかに笑った
不動峰の橘といい、このグループは爽やかな人が多い


『あんまりサエには言う事が無いわ。流石ね』

「ハハ。桜にそう言われるとなんだかテレるな
あ、ドリンクある?」

『ええ。あるわよ』


はい、と渡せば佐伯はありがとう、と笑う
午後にもなると日差しは更にきつくなり、ドリンクの減りも半端ない
全員汗をかいているし
熱中症や脱水症状の危険性を彼等は分かっているのだから当然だ


『(この際全員のを換えようかしら)』


まだまだ午後は長いが、また作ればいいのだ
桜はクーラーボックスに入れておいたドリンクの中身を確認した
しっかりと全員分入っている


「っていうか、それどうしたの?」

『クーラーボックスのこと?』

「ああ。午前中は無かったよね?」

『ええ
ドリンクのボトルは何個使ってもいいって言われたんだけどね
交換する時にいちいち部屋に戻るのが大変
って景吾に言ったらくれたのよ。本当、準備いいわよね』


苦笑した桜に佐伯も確かに、と頷いた
しかし便利なことは変わらない
すると佐伯は桜の持つボトルをひょい、と取った


『サエ?』

「じゃ、行こうか。俺も渡すの手伝うよ」

『え…でも』


まさか選手に手伝わせるわけにはいかない
それに桜はそこらの女子より格段に力が強い
というか、男子と同等の時もある
だから持ってもらうという選択肢はないのだが


「少し休憩入れようと思ってね
だから手伝わせてくれないか?」


決して恩着せがましくないように
あくまで手伝いたいのだと言われてしまえば断るのは逆に申し訳ない
桜は佐伯の申し出にふわっと笑った


『ありがとう。助かるわ』


穏やかに笑った佐伯と桜は歩き出した
すると佐伯はところで、と桜を見下した


「昼は立海と食べてたんだね」

『ええ。誘われてね』

「なら、夕食は六角で食べないかい?」


そう誘われた桜は、眉尻を下げて申し訳なさそうな顔をした


『ごめんなさい。もう英二と桃に誘われてて』


立海と食べていた桜を見た菊丸と桃城は
すぐさま桜に約束を取り付けに来たのだ


「そっかぁ。さすがだな。行動が遅かったみたいだね」

『誘ってくれてありがとう
もしよければ明日の朝とか、また別の機会に食べましょう?』

「そうだね。まだ時間はあるしね
それにしても、かなり盛り上がってたね
なんだか切原くんと、丸井かな?
必死そうだったけどどうしたの?」


首を傾げる佐伯に桜は思い出してクスッと笑った
確かにあの時の彼等は必死だった
主に鬼のような顔をした真田とニッコリと笑った幸村の為に


『夏休みの宿題を持って来いって言われてたでしょ?
あれ、立海は7月中
もしくは8月の最初の方で終わらせなきゃいけなかったらしいの
だけどあの2人、1科目分の問題集丸々残ってるらしくって』

「へぇ」

『しかもそれ苦手科目なのよ
だから絶対終わらせられないんじゃないかって言われてね』

「ああ。苦手科目は最後まで残しちゃうと後が怖いよね」


桜自身に覚えは無いが、菊丸や桃城
それにクラスメートが切羽詰まっていたのを覚えている
夏休み最終日どころか、休みが明けても残っていたのだ
それは焦りもするだろう


『ええ。だからこの合宿中に終わらせるってことになったの
まぁ、分からない所は私が教えるってことになってね』

「桜が教えてくれるの?」

『ええ』


すると佐伯は思案顔になった
視線の先に居る二人の少年を見つめる


「……こっちも剣太郎とダビデがなぁ
剣太郎は最終日近くに自分にプレッシャーをかけてやろうとするし
ダビデもなんだかんだで先延ばしにするタイプだし」

『葵くんはわかるけど、ダビデくんも?』

「ああ。あれで結構ね
よくバネさんが怒るんだけど、そのバネさんもコツコツとするタイプじゃないからね」


苦笑する佐伯に黒羽を見る
確かにそんな感じもする



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ