夜空を纏う四ノ姫2

□六道骸VS.バイパー
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粉々にされたはずの三叉槍の柄を、グローブをはめた男の手が掴む
眼帯が外れ、そこから赤い目に漢数字の六の文字がのぞいた


「クフフ。クフフフ」

「!!?」

「ムム?男の声…?」


すると地面が割れ、バイパーに襲い掛かった
バイパーは後ろに倒れる


「クフフフ。随分いきがっているじゃありませんか






マフィア風情が






霧が晴れ、オッドアイの少年の姿が現れる
突然の出現にザンザスの眼も鋭く吊りあがった
桜は息を整えて彼の名を呼んだ


『骸…』

「六道骸…!!間違いない」

「骸……無事だったんだ…」

「お久しぶりです。舞い戻ってきましたよ……………





輪廻の果てより」





フッと笑う骸にツナの表情は晴れないばかりか背筋を冷たいものが滑る
骸は興味を無くしたようにツナから視線を外すと、桜を柔らかい目で見つめた


「桜…………」

『骸……』

「貴女に会いたかった……本当に……」

『……私も……会いたかった…………
…色々…ありがとう……』

「……桜の頼みですからね…………
それに、利害が一致したんです」


視線を逸らして言う骸に桜は目尻を下げて笑った
幸村と忍足は安堵なのか呆れなのか判別しづらい息を吐く


「奴が霧の守護者の正体なのかコラ」

「ああ。せやで」

「あのカッコつけたがりの男がそうだよ」

「………酷い言われ様ですね。心外ですよ侑士、精市」

「俺、何も言っとらんやろ」


忍足はさらに深い溜息をついて髪を掻き上げた
地面に倒れていたバイパーはむくりと起き上がった


「……………ウム。六道骸…
どこかで聞いた名だと思ったが思い出したよ
たしか一月程前だ


復讐者の牢獄で脱走を試みた者がいた

そいつの名が六道骸」


「なあ!!」

「あの鉄壁と言われる復讐者の牢獄を……」

「ま…っまた脱走したの―――!!?」

「………脱走…か」


ぽつりと零した宍戸の声はバイパーの次の声に呑まれた


「だが脱走は失敗に終わったはず
更に脱走の困難な光も音も届かない最下層の牢獄にぶちこまれたと聞いたよ」

「クフフフ
ボンゴレが誇る特殊暗殺部隊ヴァリアーの情報網もたかが知れてますね」

「ム」

「現に僕はここに在る」


そう言って笑った骸にバイパーは心底呆れたように言う


「面倒くさい奴だなぁ
いいよ。はっきりさせよう
君は女についた幻覚だろ」


するとバイパーのフードの中から吹雪が出てきた
一瞬にして体育館は極寒の地になる


「さすがに寒いな」

「桜。侑士の後ろに居るといいよ。風はしのげるし」


「……風避けか。ええで。桜のだったらな」

『いや、大丈夫よ』

「………いいのかよ。こんな呑気で…」


若干宍戸は遠い目をした
骸の体が足から凍りついてきていたのだ
もう少し危機感があってもいいと思う
だが、もう彼女たちは微塵も心配していなかった


「(まあ俺もだけどな……)」

「おやおや?」

「幻覚でできた術士に負けてあげるほど、僕はおひと好しじゃないんだ」



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