頂を目指す二ノ姫W

□1日目D
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リョーマと裕太は、先程とは打って変わった立海に思わず呆気にとられた


「……さっきまでが嘘みたいだ」

「……あの真田さんが……」


呆然とする裕太とリョーマの頭をペシっと叩いて意識を向ける


『コラコラ。向こうはいいのよ
それで、貴方達も進めたの?』

「あ、はい
ただ分からない問題が1つあったんですけどとばしました」

「俺はまだ大丈夫っス」


そう言った裕太とリョーマに対し、桃城と菊丸は違うようだ
それぞれテキストを広げれば全く進んでいない様子
だらだらと冷や汗を流す2人のテキストを反対から見ながら指をさす


『えっと、ここは………そうね
この文章を参考にして解いてみて』

『ここはほら、この公式を使えばいいのよ
するとこうなって……』

「あっそうか!!」

「にゃるほど〜。だからかぁ」


数分後には桃城と菊丸の表情がすっきりしていた
桜は次を指示して裕太の問題に取り掛かる


『でも、裕太は基本がしっかり出来てるから教えるのが楽ね
分からないのも応用問題だからそれほど困らないし』

「………観月さんにスパルタで教えられましたし…
それに勉強でテニスの時間を取られたく無くて」

『いい心がけよ』


にっこりと笑ってみれば裕太はパッと表情を明るくさせた
クスクス笑っていると、リョーマが声を掛けた


「……桜先輩。ここだけ分かんないっス」

『どれどれ。ああ。これは簡単よ』


そうして教えるとあっさりと理解したリョーマは今日のノルマを終わらせたらしい
フゥと息をついて体を伸ばした。桜はふわっと笑う


『お疲れさま』

「…っス。ありがとうございました」

『この調子で明日もね』

「分かったっス
ところで、真田さん随分と静かになったけど何したんスか?」


不思議そうに聞いてくるリョーマに桜も首を傾げる


『何も?別にちょっと煩いわよって言っただけだし』

「……それにしては…
さっきとは打って変わって辛抱強く教えてるみたいだけど」

『弦一郎は元々我慢強いはずなのよ
おじい様に鍛えられてるのだし
ただ、まぁ感情に走りすぎる所が無いとは言えないわね
でも、一度言えばちゃんと分かってくれるわよ?』

「………なんか、桜先輩ってお母さんみたいっスね」



そう言われて複雑な気分になった
桜は困った表情で口を開くが、その前に桃城がバッと顔をあげた


「越前!!お前桜先輩に何言ってんだ!!」

『コラ桃。いいから問題集』

「…………はい」


すごすごと顔を戻した桃城に息をついてリョーマを見やる
彼は拙い事を言ってしまった、というような顔をしていた
普段の生意気さとは違うその表情に桜は思わず噴き出した


『そんな顔しなくても。私よくそれ言われるわ』

「そうなんスか」

『ええ。怒り方で言われた事もあるし
普通に話している時も言われたし
だから別に気にしなくていいわよ。私もそう思うから』


面白そうに笑えばリョーマも口元を緩めた

ある程度ペンが進むのを見て、桜は持ってきたノートを広げることにした
今日のことを思い出しながらページを埋めていく
人数が多く書きとめることは多い
リョーマが桜のノートを覗き込む


「…細かいっスね」

『そう?いつもこんな感じよ』

「そうなんスか?」

『ええ。私に出来ることは少ないからね』

「へぇ…」

『ほら、あんまり見ないの
宿題終わったんなら部屋に帰って大丈夫よ』

「ウィース」


それから黙々と書く音が部屋を満たした
ある程度書き終わった桜はさて、と菊丸と桃城に視線を戻す
先程とは変わって紙が黒くなってきていた
桜は菊丸の手元を覗き込む


『あら。なかなか出来てきてるわよ。その調子』

「……わかんないとこは飛ばすんだっけ」

『それでもいいわよ
あとで渡してもらった方がいっぺんに教えられていいかもね』

「ん〜分かった」


一つの単元にはいっているので全く分からないという問題は無いだろう
桜は今まで任せきりにしていた赤也と丸井の方に向かった


『うん。結構進んだわね』

「…桜さん」

「…やる時はやるぜぃ」

「…ならば普段からやる気を見せるんだな」

「全くけしからん」


真田はフン、と鼻を鳴らす
しかし声はやはり抑えていた
桜は赤也と丸井の間に座って問題集を覗き見る


『どれどれ……うん。解けてる解けてる。いい調子ね』

「………でも、この比較級?ってよくわかんねぇっス」

「……俺は図形が苦手だ」

『うーん。そうね
比較級はそれほど難しくは無いから、まずはしっかり文法の構成を見てみましょう
図形は習うより慣れろが私の持論なんだけど………
全体を見つつ小さい図形を探すようにしていけばいいから………』


勉強会は深夜まで及んだ。



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