夜空を纏う四ノ姫2

□雲の守護者の対決
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『それじゃあ、お願いね、ディーノ』

「…あ、ああ」


とある病院
ディーノは静かな表情でそう言う桜に、どこか薄ら寒い思いを抱いていた
突然来て、ディーノがしたかったことの全ての準備をつつがなく終わらせた彼女
その手際の良さには舌を巻いた
彼女の目には何が映っているのだろう
今は紫暗色に鈍く光っている


「………ところで、桜は何で恭弥の勝負を見に行かなかった?」

「そうだぜ桜嬢。それにボスもだ
いくら恭弥が強くなったっていっても相手はヴァリアーのボス補佐だ…ハンパねーぜ
見にいってやんなくていいのかよ」


ロマーリオの言葉は当然だった
長かった戦いもこの戦いで決まると言っても過言ではないのだから

しかしディーノは不安など全く感じさせない表情で、笑った


「桜も分かってたんだな」

『まぁ、ね』

「?」

「あのなロマーリオ
………恭弥にはゴーラ・モスカなんて奴……
眼中にないみたいだぜ」

『そうでしょうね…』


桜はギュッと拳を握り締めた
いま、何が起こっているのか。それが怖い
体が震えないように足を踏みしめる
すると、奥から人影が出てきた


「…ディーノさん。ロマーリオさん
受け入れの準備、出来たらしいで」

「そうか。それで……」

「今は安定しとる。安心してええで」

「………そうか」


ディーノは安堵の息を吐くと、桜の肩をポスッと叩く
そしてニッと笑いかけた


「じゃあ始めっか。後は任せておけ」

『…………ええ』


すると、奥からまた人が出てきた
しかし彼は切羽詰まった様子で飛び出してきたと言った方が正解だ


「大変です!!
今イタリアから連絡が来たらしいんですが、門外顧問チームからです!!」

『!!』

「門外顧問…!!9代目のことか!!」

「はい。しかし落ち着いてよく聞いてください


イタリアにいた9代目は偽物だったようです


「偽物!!」

「何だって!!」

『……それで…本物の9代目はどこに?』


恐ろしいほどに低い桜の声にディーノはたじろいだ
こんな桜を、彼は一度として見た事がなかった


「(……どうしたんだ…桜………)」

「9代目専用ジェットが日本に向かったそうです。ただ………」

「ただなんだ!!!」


鋭い声に、彼は言いづらそうに息を呑む
そして感情を失ったかのような平坦な声を発した
そうしなければ、立っていられないというように


「ヴァリアー側の雲の守護者
あれは恐らく、旧イタリア軍がもみ消そうとしていた兵器だそうです
名前はゴーラ・モスカ」

「ゴーラ・モスカ……だって?」

「あの兵器は門外顧問の話では
ある特殊な人間からのみ採取される炎の生命エネルギーを動力源としているそうです」


それを聞いたディーノの表情が凍りついた
最悪の事態が危険信号を放つ


「まさか……それは…………」

「門外顧問からの指示です
雲のリングの争奪戦を直ちに中止させるようにと
あの中には……





9代目がいると思われます





ディーノは愕然と目を見開いた
桜も拳を血を流すのもいとわずに握り続ける
ギリッと唇を噛み締め、桜はディーノに固い声を発した


『ディーノ。私は並中に向かうわ』

「!!まて桜。それなら俺も」

『貴方はここでやるべきことがあるでしょう
とにかく、移送だけでもしないと
いまだ危険な状態だというのには変わりは無いわ』

「…だが…………」

『最悪の事態を想定して、9代目をここに搬送させる。その準備もしておいて
この2人はここに残しておくし、なんなら亮にも頼むわ』

「…………………わかった。頼む、桜」


悲痛な面持ちでそう言ったディーノに、桜は頷く
その表情は感情の全く分からない、無表情だった
ディーノはそれに震える体を叱咤して桜の背中を叩く


「9代目を頼む桜。俺も終わったらすぐに向かう」

『ええ』


窓から2階の高さを飛び降りて、難なく地面に着地する
そして風を切って走り出した
ディーノはくそっ、と壁を拳で殴り、ロマーリオと彼等を従え病室に入って行った



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