夜空を纏う四ノ姫2

□雲の守護者の対決
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桜は若と共に応接室に向かっていた
雲雀の様子を見る為だ
並中はチェルベッロの術士のおかげで幻覚により元の姿を保っていた
だが本当のことを知っているだけに何やら複雑な気分だ


「(校舎B棟なんか考えたくもないな)」


人っ子一人いない廊下を歩き、応接室のドアを叩く


『恭弥。いる?』

「…やぁ、桜、日吉」


ソファに腰をかけた雲雀が桜を見て笑った
中に入ると、そこには越前と木手もいる
だが彼等の姿に驚いて足を止めた
日吉も表情を引き攣らせる


『……どうしたの、2人とも』

「……まぁ、色々あったんです」

「…………はぁ」


何故か全身傷だらけの越前と木手に桜は思わず雲雀を見る
雲雀は笑ってトンファーを布で拭いていた


「(………ご愁傷様だな)」

『恭弥………』

「調子はどうかって聞かれたからね」


桜もハァ、と息を吐くしかなかった
何があったかは推して知るべし


『…まぁ、調子良さそうなら良かったわ』

「桜もやるかい?」

『遠慮しておくわ。昨日怪我したばかりだし』


袖を捲るとそこには白い肌よりも白い包帯
雲雀はギュッと眉を顰めた
ゆっくりと包帯に手をのばす


「……君がこんな怪我するとは思わなかったよ……
でも、あの相手じゃ仕方ないかもね」

「…雲雀さんもあの女性が只者ではないと?」


日吉が怪訝な顔で問うと雲雀は何てことないように言う


「なんとなくね。中々面白そうな戦いではあったけど」


咬み殺しがいがある


物騒なことを口にしながら雲雀はソファから立ち上がる
ふわぁ、と欠伸を一つしてトンファーを振るった
そしてジッと日吉を見た


「そうだ。君がやる?」

「……遠慮します。これから用事があるので」


すかさず断られるが、雲雀は案外簡単に退いた


「ふーん。まぁいいよ
本当なら跳ね馬を噛み殺そうと思ったんだけど
ここ数日忙しいらしいからあんまり会ってないし
それに憂さ晴らしは越前と木手で出来たしね」

「(憂さ晴らしと言いましたね…)」

「(ディーノさん。後で覚えておいてよね)」

「(運が悪いな)」

『(あらあら……)』


不機嫌度MAXの越前と木手に桜は困惑した
どうやらディーノのとばっちりを喰らってしまったらしい
木手は修行の旅といい不憫である


「まぁ、この調子なら今夜の対戦も安心ですね」

『ええ。私達多分見に行けないから』

「………そう」


雲雀が一瞬眉を動かした
しかし何事もなかったかのように机の上の書類を手に取る
内心少し残念がっていたりするのだが桜達は気付かない


「まぁ、すぐに終わらなきゃ見れるかもしれませんね」

『でも恭弥ならすぐに終わらせてしまいそうよ』


相手はアレだし………


心の中で呟いて、桜は雲雀の傍らに立って彼の腕をとった
怪訝な顔で見て来る雲雀に柔らかく微笑んで手を握る


『怪我、しないように気をつけてね、恭弥』

「…それ、君が言えることじゃないよ」


今まさに包帯を見せてくれた彼女が言う言葉では無い
しかも彼女は自ら作ったような傷まであるのだ
桜は苦笑して腕を離す


『フフ。そうね』

「まぁ、噛み殺してくるよ」

『………ええ』


雲雀は柔らかい桜の表情に不敵に笑った




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