頂を目指す二ノ姫W

□2日目A
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今朝ジローにも言った通り、今日は立海と氷帝のコーチをする
マネージャーは栞だ

手際良くドリンクを作りコートに入る
ある程度見終わればもう日がかなり高く、汗が流れ落ちていた
桜は手を翳して太陽の光を遮り一息ついた
栞がドリンクを片手に桜に駆け寄ってくる


「はい、桜ちゃんの分」

『あ、ありがとう』

「今休憩でしょ〜?
洗濯物は私がやるから、桜ちゃん少し休んでおいでよ
昨日の疲れがあるんだし、同じように考えちゃまずいよ?」

『そう、ね…………』


逡巡すると、それに同意する声がした
柳生がタオルを片手に近づいてくる


「初瀬さんの仰るとおりですね
少し座って休憩された方がいいですよ」

「…でしょ?そう思うよね
桜ちゃんずっと立ちっぱなし喋りっぱなしだし」

「ええ。さあ桜さん
あちらの木陰にでもいけば涼しいですよ」

『…………はいはい。わかったわ』


桜の返事を聞いて柳生は満足そうに笑った
そして栞にタオルを差し出す


「申し訳ありません
タオルを換えていただいても構いませんか?」

「OK。んじゃあこれね」

「ありがとうございます」


カゴの中に入れてあったらしいタオルを取り出し差しだす
柳生の分も受け取って、栞は桜を柳生に押し出した


「それじゃあ私は他の人のも見てくるからしっかり休んどくんだよ?」

『ええ。分かったわ』


柳生に連れられて木陰で腰を下ろす
案外参っていたようで重たい息を吐いた
柳生は肩を落として桜の隣に腰掛ける


「あまり無理をしてはなりませんよ?
また入院してしまっては大変ですからね」

『……分かってるわ
心配してくれてありがとうね“雅治”』


柳生に対してそう呼んだ瞬間、柳生の動きが止まった
眼鏡の奥が困惑している


「え……何を仰ってるんですか桜さん」

『急いでたの?カツラから銀髪が見えてるわよ』

「!!なんじゃとっ!!!」

『……嘘よ』

「!!!」


一気に取り乱した柳生、に変装した仁王に桜はフッと吹き出した
仁王はバッと桜を見てやられたと言わんばかりに天を仰いだ


「あ〜……まさかペテン師がペテンにかけられるとはの」

『というか単純な引っ掛けだったんだけど…
まさか引っかかると思わなかったわ』


顎を引いて口元を押さえた桜は見上げるように仁王を横目で見る
悪戯が成功した子どものよう、とはまさにこの事だと仁王は思った
桜は楽しそうに笑う


『私もペテン師名乗れるわね?』

「…じゃな」


カツラを取って眼鏡を外した仁王は髪をかきむしった


「見破られるとは思わんかった…」

『フフ。とはいっても殆どカンだったし
近くで見ても分からないわよ。凄い完成度ね』


癖やちょっとしたしぐさまで完璧だ
常人ならそうとはすぐに気付かないだろう
気付かなくても別に悪くないレベルだ
しかし仁王は悔しいらしい


「いや、まだまだじゃ
見抜く者にも見破られない完璧な変装を極めるぜよ」

『一体貴方はどこに行きたいのよ』


苦笑いを浮かべた桜に、仁王はピヨ、と呟く
それなりの付き合いだが、未だに時折紡がれるその言語の意味は分かっていない


『ところで、雅治が比呂士の変装をしてるってことは、今比呂士は』

「俺の恰好をしてるぜよ
幸村達相手にどこまで騙せるか試してたんじゃが」

『へぇ。それで?』

「………幸村と柳は騙せんかったぜよ…」


早々に見分けられ、指摘されたらしい
まぁ、その2人なら分からないでもない
幸村は極上の笑みで、柳は冷静沈着に言っただろう
彼等を騙すのは至難の技だ



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