夜空を纏う四ノ姫3

□変貌
3ページ/7ページ




「ま…まさかおまえ…」

「や…山本!?
(い…今の技って…スクアーロのじゃ…)」


ツナと獄寺は驚いて10年後の山本に駆け寄った
顎に傷があり、どこか影があるような笑みを浮かべてはいる
しかし面影は消しきれない


「あれ?悪い冗談じゃ…ねーよな
門外顧問とこの使者を迎えに来たらおまえ達までって…
ん…?でも縮んでねーか?幻…?妖怪か?」

「(やっぱこの人山本だ―――!!)」


ツナは心の中で叫んだ
彼の天然ぶりは変わらないらしい
困ったように頭に手を持っていき口を開いた


「あ…オレ達…10年バズーカで過去から来て…」

「!ああそっか――!!昔の!
あ……あせったぜ!どーりでな………元気そうだな、ツナ」


若干顔に眉を顰めてそう言う山本にツナは曖昧に返事を返した
獄寺は山本を睨みつける
それを気に留めず、山本はツナたちを促した


「とりあえずいこーぜ。こんな奴…相手にするだけ損だ」

「!」

「(え…山本…そんなこと知ってるんだ…)」


彼の成長に戸惑いつつも山本について行く事になった
暗い夜道をひたすら歩きながらツナは山本と話に花を咲かせる


「ハハハ!そっか!
10年前っていうとリング争奪戦が終わった頃か。懐かしーな」

「うん。そっちは…?
(不思議だな。いつもの山本と話してるみたいだ…)」


確かに外見上大人になったが、その口調の所為か、彼の雰囲気の所為か
いつもの山本のようだった
それがツナを僅かに安心させた


「あれからいろいろあったんだぜ」


しかしそう言う山本の表情は形容しがたい難しいものだった
10年の月日の長さを否応にも感じさせる

すると山本はツナの顔を見て逡巡するように目を伏せた
しかしまっすぐツナの目を見ると口を開く


「なぁ、ツナ。桜は………元気か?」

「えっ桜?」


突拍子もなく出てきた名前にツナは驚いた
しかし、嫌に真剣な山本の表情に戸惑いながらも言った


「うん。元気だけど…桜がどうかしたの?」

「……桜…な……」

「(……今言うべきでは…ない…か…)」


言いにくそうに眼を瞑った山本を見かねてか
それとも自分が聞きたくないからか
ラルは山本の言葉を遮った


「……おい…走らないのか?歩いていては朝までかかるぞ」

「…そっか。言ってなかったな
おまえの知ってるアジトの在処の情報はガセなんだ」


ラルは疑問符を浮かべる
山本は「もうそろそろだな」と懐に手を入れた
背後のツナたちに首を向ける


「オレを見失わないようについてきてくれ」


小さな箱を取り出した山本はマモンチェーンを外した指輪を箱の凹みに差し込んだ
するとそこから光が生じ、何かが飛び出して山本の周りを旋回した


「!?」

「何だ!?」

「防犯対策のカモフラだ。よそ見はするなよ」


山本の言葉に訝るツナの頬に一滴の雨が当たった
それは瞬く間にスコールのように激しく降り注ぎ、視界を遮る
激しい雨に身体を打たれ、ラルは額に上げていたゴーグルを下ろした


「(雨の属性の匣か……
ボンゴレリングなしで開匣できるとはな…)」

「いてて!!
なんも見えねぇ!!」

「ジャングルの雨みたいだ!!」


激しい雨に目も開けられず、ツナと獄寺は必死に顔を腕で守る
すると地面に当たる雨の音を押しのけて、山本の声がした


「こっちだ」




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ