頂を目指す二ノ姫W

□2日目C
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午後の練習も滞りなく終了した
桜は夕食を待つ間、合宿所と言うには煌びやかな建物を歩いていた
細部まで見たことがなかった為、散歩がてら観察していたのだ


『(ホント、流石よねぇ…)』


これほど立派な建物を合宿所として開放する辺り、跡部の凄さが伺える
それは桜には懐かしいモノだった


『相変わらず……ってことなのかしらね……』


それが喜んでいい事かどうかは分かりきったことだが




ふらふらと宛ても無く足を進めていた桜は、多目的室の前で足を止めた
中から人の話し声がしたのだ
それは桜の後輩たちのものだった


「そーいや、青学と立海ってなんか似てるよな」

「……確かに」

「そう言われてみれば……そうだな」


そっと中をのぞけば、いたのは海堂、赤也、日吉
奇しくも青学、立海、氷帝の次期部長候補が集結していた
珍しい取り合わせに桜は思わず中に入った
彼等は気付かずに話し続ける


「なんつーか、個性的っつーか」

「それはお前が言えることじゃねぇだろ」

「どういう意味だよ…」


赤也がジト目で海堂を睨みつける
そこまで沸点の高くない海堂が赤也を見れば、日吉がため息をついた


「まぁ、個性的っていう点から言えば、跡部部長の右に出るモノはいないがな」

「……まぁ、それは否定しねェ」

「……あの人の下に居られるお前ってある意味すげぇな……」


赤也が心底げっそりした顔で言った
「氷帝コールって何だよ……」と苦い顔をする
それに海堂も頷いた


「真顔でいられた手塚部長には驚いた」

「それって、関東大会の時のことか?」

「ああ」

「ホント、手塚さんて何者だよ…」


確かに、手塚は関東大会シングルス1の時、跡部との試合の前
氷帝コールが響き渡る中一人平然とし、さらに「もういいのか?」とまで聞いたぐらいだ
それに「満足だ」と返した跡部も跡部なのだが

赤也はげっそりと肩を落とせば遠い目をした


「…まぁ、真田副部長も大概だけどな
たるんどる、とか何時代だよって感じだし…
幾つだよって顔してるし……」

「真田さんと手塚さんが似てるんだよな、厳格なところとか」

「……うちの部長は殴ったりしねぇがな」

「そうだよな〜。そこは手塚さんいいよな〜
あ、でもグラウンド10周、とかはマジ勘弁してほしいけど」

「跡部さんはそういうところはないな」


日吉が考えるように言うと、海堂が眉間にしわを寄せる


「確かに、芥川さんみたいな人をレギュラーにするぐらいだからな」

「あの人、立海にいたらヤバかったと思うぜ?」


ぜってぇ鉄拳毎日受ける羽目になるぜ

うちでも毎回走らされる気がするが……

素直に走るかは知らねぇが


『(フフッ。確かに)』


桜も思わずクスクスと笑ってしまった
彼等の言う事はかなりの確率で当たっているだろう

すると、背後に気配を感じた
振り返れば予想通りの顔触れ


『(あらあら)』

「っつーかさ、氷帝にはデータマンいねぇよな」

「青学には乾先輩がいて、立海には柳さんがいるが…」

「うちは頭使うのはもっぱら跡部部長か
もしくは忍足さんあたりがするからな」

「あ〜。なんていうか、跡部さんって大概何でも出来るよな」

「一人で何役もこなすからな」

「副部長もいないし、独裁体制ってやつか?」


海堂の言葉に日吉が苦笑する
すると赤也があ〜、と変な声を上げた



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