頂を目指す二ノ姫W

□2日目D
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夕食の席で、桜は栞達マネージャーと席を囲んでいた
このメンバーで食事をするのは初めてである
桜はふわっと笑って彼女たちを見回した


『さて、みんな2日目もお疲れ様。何か困ったことは無い?』

「はい!大丈夫です!ちょっと筋肉痛になりましたけど」

「あ〜。普段使わない筋肉使うもんねぇ
お風呂入った時にでもしっかりほぐしておくんだよ〜?」

「はい」

「それにしても、みんなレベル高いですね
私も凄い楽しんじゃいました」


杏がそう笑い、桜乃も大きく頷く
朋香は目を輝かせて青学が固まって座っている方を見た


「リョーマ様の活躍をこんな間近で見られるなんて〜。本当天国です!」

「朋香ちゃんは本当に越前くん好きなんだね」


栞はテーブルに肘をついてそう言った
桜はそれを見て行儀が悪いと肘を叩く
栞はゴメンゴメンと顔の前に手をのばした


「ところでさ、あの2人どうしたん?」

「え?」


栞の示す先には、やつれた様子の海堂と赤也
赤也を見た時に杏の眉が一瞬跳ねたのを見ないフリをして桜は苦笑を浮かべた


『ああ』


あの様子では精神的に疲れることを延々とされたのだろう
桜は内心掌を合わせて栞達に事の顛末を話した
不二と幸村のしたことは分からないが、粗方の予想はつく
桜も大体は同じだから


「ふえ〜。怖〜い。だからあんなに疲れた顔してるんですね」

「…まるで生気が抜けたみたいですね」

「一体、何があったんでしょうか?」

『聞かないであげてね。きっと思い出したくないだろうし』

「…まぁ、みんな個性的でクセのある人たちばかりだしね
後輩君たちの心労というか、被害は大きいだろうし、愚痴りたくのも解るよ」


まぁ、バレるように話してた事を怒るなんて面白いけどさ〜


栞はそう言って味噌汁を流し込んだ
桜もそうね、と笑う
すると朋香が桜と栞に顔を向けた





「そういえば、桜お姉さまと栞先輩って、好きな人いるんですか〜?」





その瞬間、部屋の空気が変わったことに気付いたのは栞だけだった
桜は後輩の唐突な質問に孫を見るような気分だった
目をキラキラさせる朋香が爆弾発言をしたなんて露ほども分かっていないだろう
栞は内心苦笑しながら口を開く


「いきなりだね〜。まぁ女の子ってこういう話好きだもんね
ちなみに私はいないよ〜?」
へらっと笑う栞に杏が口を尖らせた


「え〜。栞さんも女の子じゃないですか
それに、美人なのに勿体ないです」

「そういわれて悪い気はしないかな〜
でもなんかアクの強い人たちと知り合いなせいでさ〜
普通の男子に魅力が持てなくてさ〜

それにほら、カッコイイ人って手塚君とか不二君とか、あのへんで見慣れちゃったし」


ヒシヒシと感じる視線に栞は笑いだしたくなった
彼らが聞きたいのは自分などではなく彼女のなのだ
仕方なく促してあげることにする
それで落ち込むのは彼等の勝手だ


「それで?桜ちゃんは〜?」

『え………私……?』


困ったように桜は目尻を下げた
答えを分かっているだけに室内の空気を予想して栞はテーブルの上で手の平を合わせる


「(まぁ、仕方ない事だからね〜)」

『そうね。好きな人はいないかな?』

「ええっ!!桜お姉さまもですか!!」


この瞬間、室内は上から押さえられているかのように一気に空気が重くなった
息苦しさまで感じるそれは、彼等の心を表している



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