夜空を纏う四ノ姫3

□裏切りの姫君
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桜たちはメローネ基地へと戻ってきた
柳にγを医務室に突っ込むように指示を出し
跡部を連れて入江がいるであろう部屋へと向かう
桜は跡部を目だけで見上げた


『随分と役者ね』

「……何の事だ?」


しらばっくれる跡部に桜はフイ、と視線を外した
すると先程の態度とは打って変わって項垂れていた


『それにしても…ああ……どうしよう……
白蘭は怒るかしら……ボンゴレリングを回収しなかったこと……』

「………白蘭様なら分かってくださるだろう」

『…………』


頬に手を当てて心配そうに目を伏せる桜の歩みは若干遅い
跡部の歩幅ではかなり歩きづらいほどだ
それほど心配なのだ
しかし跡部にとってはあまり面白くない


「(そんな顔………するのか………)」


跡部もあまり見た事のない、その表情。跡部の歩みも遅くなった

しかし目的の部屋にはすぐに着いてしまった
部屋ではチェルベッロの無機質な声と、入江の苛立った声
手塚の冷静かつ鋭い声が飛び交っていた


「精製度Aのリング1つが神社から3キロの地点で消滅したぞ!!
2つ目のリングは赤河町に移動してるが!……!……こちらも消滅!!」

「なんだって!?まだうちの部隊は到着しないのか!!」

「………うん。まだだね」


モニターを見ていた手塚の報告に怒鳴る入江
それに不二が首を振ればチェルベッロの一人が口を開く


「やはり第3部隊の凍結をといて協力させた方が…」

「ダメだ!!彼らは上司の命令に背いたんだぞ!
早く撤退させろ!!これは命令だ!」


桜は入江たちに気付かれないように気配を殺して近寄った
跡部もそれに続く

その時、スクリーンに映し出されていたレーダーの画面が消え、代わりに別の声が乱入した





《不機嫌そうだね
久しぶり。正チャン、国光クン、それに周助クン》





スクリーンにはいつもの笑みを携えた白蘭が映し出され、桜と跡部は動きを止めた
入江はムスッとした表情で白蘭を見上げる
手塚は額にしわを寄せて同じように見上げた


「……………とうとう…始まりました」

《うん。でもあんまり幸先よくないみたいだね》

「ブラックスペルが彼らと交戦したらしいです
彼らに協力者のいる可能性も……」

《それって計画と違うじゃん
言ったはずだよ。彼らがやって来たら迅速に……》

「やってますよ!!僕はやってるんだ!!」

「…落ち着け、入江」

《出たよ。正チャンの逆ギレ》


不機嫌な入江とそれを制する手塚を白蘭は面白そうに見ていた
不意に白蘭の眼が桜たちへと移り、桜と跡部の体が微かに跳ねる


《それじゃあ桜と景チャンにでも聞いてみようか
その様子じゃその現場にいたみたいだし》

「えっ!!」

「!」


白蘭の言葉に入江と手塚は勢いよく振り返った
不二はぎこちなく桜と跡部を見る
まさかいるとは思っていなかったのか彼等は驚いた
しかしその勢いのまま入江が桜に詰め寄った


「桜!!跡部くん!!!今までどこにいたんだ!!」

「白蘭様の仰ったとおりγのところだ」

「…蓮二も一緒だったんじゃなかったっけ?」

『γを医務室に連れて行ってもらったの』


ああ、と不二は普段と変わりないような笑みを張り付けている
桜はそれに気付かないフリをして白蘭を見上げた
彼もいつもと変わらない張り付けたような笑みを浮かべていた


《へぇ。それで??》


問いかけられ、桜は片膝をつき白蘭に畏まった


『申しわけありません白蘭様
ボンゴレリングを奪いませんでした
どのような処罰でも甘んじてお受けいたします』


桜の普段とは全く違うその口調に跡部たちは目を丸くした
そしてハッとして跡部もその隣に膝をつく




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