夜空を纏う四ノ姫3

□裏切りの姫君
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「桜……隊長だけの責任ではありません
自分たちも奪おうとしませんでした
申し訳ありません」


頭を下げた桜と跡部
白蘭は不思議そうに2人を見返した


《奪わなかった?奪えなかったとは言わないの?》


不思議そうな白蘭に、跡部は静かに頷いた


「はい」

『言い訳がましいのですが、無理をすれば奪えました。しかし……』


そう言って桜は心臓のあたりに手を持っていって目を伏せた
跡部もギュッと拳を握る
その様子に白蘭は納得したように笑った


《そっか。それなら仕方ないね》

「?」


白蘭と桜のやり取りの意味がわからなかった入江は2人を交互に見た
しかし手塚と不二はその意味するところを理解して表情を曇らせる
白蘭は目を細めて頬杖をついた


《君を失う訳にはいかないし、景チャンと蓮二クンだけじゃまだ危ないしね
そういうことならいいよ》

「…………」

《それにちゃんと情報を持って帰って来てくれたみたいだしね
だから正チャンも2人を許してあげてくれる?》

「は………はい………」

『あ……ありがとうございます』

「………ありがとうございます」


入江は釈然としない様子だが、これ以上は追及できないと言葉を飲み込んだ
桜はパッと表情を明るくさせ、はにかんで返事をする
その彼女に白蘭は優しい目を向けた

明らかに柔らかい雰囲気に苦いものを感じて跡部は顔を逸らす
手塚と不二も似たような表情だ


《それじゃあもめるだろーけど
バレたんならブラックスペル側にも話す用意しとかなきゃね》

「!!どう説明するんですか?」

《どうって?簡単だよ、正直に話せばいい






予定通りに過去からの贈り物が届いたってね






「だけど……」


入江は逡巡し、手塚と不二も険しい表情だ
しかし白蘭は有無を言わせない声で続けた


《時計はもう止まらないよ
君は君の仕事を急ぎなよ、正チャン
僕は次の73ポリシーを紡ぎだすまでさ
桜も無理しなくていいから、次の準備を始めてね
後をよろしく、景チャンたち》


そう言って軽快な音とともに通信が切れた
桜は胸を撫で下ろし、苦悶の表情を浮かべている入江に向き直り跪いた
同じく跡部もそれに続く


『入江様。申しわけありませんでした
白蘭様はああ仰いましたが、私たちは無断で単独行動を行いました
なんなりと罰を』

「そもそも先に入江隊長に進言しなかった自分の責任です
罰なら自分に」

「あっ、い、いいよ桜、跡部くん
なんだかよくわからないけど白蘭さんが認めてるんだ
だから、次からは連絡を入れてくれると嬉しいよ」


片膝を立てて畏まった桜と跡部に入江は慌てた
彼女の腕を引っ張って無理矢理立たせる
桜はきょとんとしたが、すぐにありがとうございます、と頭を下げて笑った
入江は緩みそうになる頬を引き締めて立ち上がった2人に向き合う


「(この笑顔は反則だよなぁ…)」

「……では桜、景吾。話してほしい」

「そうだね。2人が持ち帰った情報ってやつを」

「うん。頼むよ」

『ええ。分かったわ』


促され、桜はいつも通りの態度で話し始めた





→Un afterword
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