頂を目指す二ノ姫W

□3日目@
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朝のランニングに出てみれば、海堂がすでに走っていた。勿論真田も
昨日より少し遅く起きてしまったのだ

桜はいそいそと柔軟を始め、地面を蹴った
桜の存在に気がついた海堂が顔を上げる


「おはようございます」

『おはよ、薫。早いわね』

「昨日遅く起きたので……」


今日は早く起きていつも以上にランニングをしたかった
という海堂に拍手を送りたくなる
ここにも素晴らしい向上心を持った後輩がいたのだ
それを聞いていたらしい真田が後ろから追いついてきた


「青学にも中々見所がある奴がいるようだな」

「!」

『あら弦一郎、おはよう』

「おはよう、桜」


話に入ってきた真田に海堂は若干神経をピリピリさせる
真田は気にせずに海堂に目を向けた


「言われなくても練習をし、さらに上を目指す
当たり前のことだが難しいことだ
特に赤也は朝が苦手だからな。見習わせたいぐらいだ」

「………どうも」


目つきの悪い後輩と若干居丈高な友人
なんとも不安の残る取り合わせになったものだ
桜は思わず笑ってしまった


『(2人とも目つき悪いしね)』


傍から見たら喧嘩をしているように見えなくもない
それにしても、これだけ喋りながら走っているというのに息を乱した様子がない
2人とも中学生とは思えないほどの身体能力だ
それは桜にも言えることなのだが


「海堂だったな
貴様のバギーホイップ・ショットは中々のキレがある
しかし、我が立海と渡り合うには些か力不足だな」

『(言ってる傍から喧嘩売ったわね)』

「…………フシュゥゥゥ
あの時のままならそうかもしれねぇが、今の俺は違う」

「ほう。自信があるようだな」

「…………」


何故こんな刺々しい会話になってしまったのだろう
真田は単純に指摘しただけなのだろうが、如何せん話し方と受け手に難がある
これが海堂でなければまだこうならずに済んだだろうに
ピリピリした空気が漂う


『(全く、何でこうなるのかしら
これから高校とか大学とか、社会に出たら苦労する気がするわ。この2人)』


ついそんなことを考えてしまう
何故かテニス部には性格に多少難がある子が集まっている気がしてならない
思わず息をついた
そして、唐突に気付いてしまった



彼等に、未来を見ていることに



『(………最近…多い気がするわ………………)』


彼らが今、未来の為に戦っているからだろうか
それとも、終わりを感じているからだろうか
自分に、未来など無いというのに

少なくとも、彼らが高校生になる時、桜はもう此処にはいないのだから
サキのことを気にしていたって、仕方がないというのに


『(……私はいつまで………愚かでいようというのかしら……………)』


桜は下唇を噛み締めた























「おおぅ葵くん。野菜食べなきゃためじゃん」

「す、すいません初瀬さん」

六角と朝食を食べることになり、そこに栞も入り込んできた
早速葵にちょっかいをかける栞
桜は甘みのあるクロワッサンをもそもそと食べていた
若干気に入ったらしい


「桜って和食のイメージがあるけど、やっぱりパンとかも食べるよね」

『まぁどちらかといったら和食の方が多いわよ?
昨日とかもそうだったし
ただ、今日はこのクロワッサンを食べてみたくて』

「それウマいか?」

『ええ。私は好きよ』


食べる?とちぎれば黒羽が受け取り口に放り込んだ


「お、ウマい」

「へぇ。俺にもくれない?」

『いいわよ』


佐伯も口にすれば確かに、と笑った


「俺、これ取ってくるわ」

「あ、バネさん。俺も」

「わーった。取ってくるぜ」


皿を持って黒羽は席を立った



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