頂を目指す二ノ姫W

□3日目B
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『面白いわねキヨって』

「桜ちゃんもね。でどう?」

『それじゃあキヨのもついでに教えてもらおうかな』

「俺のがついでなの!?」


ひどいよ〜、と泣き真似をする千石を桜は全く気にしない
はいはい、とあしらいさえする

すると千石が唐突に真剣な顔になった


「桜ちゃん……ゴメン
俺謝らないとなって思ってたんだ」

『何を?』

「関東大会決勝の、越前くんと真田君の試合の時さ」

『あ〜』


まだ耳の奥に残っている歓声
歴史を変えた瞬間
千石は頭をかいた


「あの時、俺は越前くんが負けるって確信してた
そんで、越前くんをシングルス1にした桜ちゃんをちょっと…
信じられないなって思ってたんだ
なんで越前くんにしたんだろうって
越前くんが可哀そうだとも思ってた」

『それが普通の反応よ。私も自分で決めてそう思った』

「でも、手塚君に言われてたんでしょ?」

『国光に言われなくても、多分私はそうしてたわ』


そう言えば、千石は呆気にとられた顔をしたがふと頬を緩ませた


「そうなんだ。でも、俺はおかしいなって思ってた
だけど、青学のみんなは信じてた。越前くんと、桜ちゃんを」

『…………』

「桜ちゃんと越前くんに凄い失礼なことを思ってたんだ
だから謝りたくて」

『謝る事じゃないのに』

「俺が謝りたいんだ」

『…じゃあ、貰っておくわ』


意外な所で律義な彼に、桜はクスクス笑った
千石も眉を下げて、フッと力が抜けたように笑った


「じゃあさ、桜ちゃん。お詫びにどっか遊びに行かない?」

『そっちが目的?よくやるわね』






















『(………これ、よく考えてみれば凄い組み合わせ……)』

「それでは、明日はやはり試合から始める事になりますかね?」


山吹中顧問伴田がそう言えば、氷帝の榊が腕を組んだ


「…この3日間はほとんど学校単位でしたから
4日目からは少し全体を通しての練習を入れてみてもいいかもしれませんね
その後で試合をしても問題は無いかと思うのですが」

「フム。榊の言う事も一理あるね
一応これからの事を考えて練習だけは分けとったが、折角の合同合宿じゃ。何かやらせたいのう」

「そ〜だね〜」

「君はどう思うかい?神崎君」


榊に話を振られた桜はそうですね、と考えるような仕草をした

3日が終わり、合宿も終盤に差し掛かったということもあり
桜は夕食の時間に顧問とミーティングを行っていた
不動峰と立海は顧問が参加していないので4人だ


『確かに、榊先生の仰ることはもっともだと思います
それにダブルスとシングルスで分ければそれほど時間もかからずに試合を行えるかと思いますし
午前中だけでも何かしてもいいかもしれません』

「なるほど
では明日の午前中に全体練習を入れ、午後から試合にしましょうか」

「だったら〜ランニングがいいと〜思うよ〜」

「ウム。午前中に体力をあらかた削っておき、
試合になった時どのように対応するかを見てもいいかもしれないねぇ」

「確かに。うちにも体力があまりない選手がおりますし」

「これだけの人間がいれば、負けず嫌いな彼等のことです
普段以上の力を見せてくれるでしょうね」


伴田がニマニマと笑い、スミレが胡散臭そうな顔をした
桜は喉で笑って数枚の紙を彼等に渡す


『それで、これがこの3日間に集めたデータです
立海と不動峰にはもう渡してあります
一応選手にも伝えてありますが、全体としてのものもありますので先生方も目を通してください』

「あぁ、ありがとうございます」

「フム。流石神崎君。細部までしっかり見ているな」

『ありがとうございます』


スミレはさっと目を通すとそれを桜に返した
お前が持っときな、と言われれば何も言えずにファイルに戻す


「それじゃあ、明日は午前中にランニングでいいね?」

「ええ。かまいませんよ」

「それで〜、午後の〜試合の組み合わせは〜」

『考えておきました。これです』


そう言って差し出したプリントに、一瞬沈黙が下りた


「………これは…」

「思うんじゃが、桜も大概スパルタじゃな」

「…流石だな、神崎君」

「これはこれは〜」


桜は満面の笑みでそれを受け止めた



→atogaki
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