頂を目指す二ノ姫W

□4日目B
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「……桜が?」


眉間にしわを寄せた大石に、栞はコクンと頷いた
周りにいた菊丸たちも暗い表情をしている


「私が戻ったら桜ちゃん、寝ちゃってて
今跡部君に部屋に連れてってもらってる
竜崎先生には言ってあるから、多分そっちに行ってると思う」

「そ……そうか……それで、桜の具合は?」

「うん…。私がいなかった間に跡部君が少し訊いたらしいんだけど
なんか立ち眩みがしたって
それで座ってたらいつの間にか寝ちゃってたらしいんだけど」


本当はそれだけではないようだ、と言うのは簡単だ

しかし、それが何なのか説明することはできない
だから栞は口を噤んだ
まず考えなくてはならないのは当事者になってしまった跡部のことだ


「桜。大丈夫かにゃ……」

「元々入院してたんだ
本人がすごい元気そうだったから忘れそうになるけど」

「病院に行った方がいいんじゃないかな」


菊丸の声に続いて佐伯と千石がそう言った
大石は渋面を作る


「確かに、その方がいいかもしれないな」

「んでも、桜ちゃんはきっと嫌がるよ?」

「だけど、このままにしてはおけないよ
もし重大な、それこそ命に関わるようなものだったら大変だろう?」


そう言ったのは険しい表情の幸村だった
自分が難病を患ったからこそ、桜の事が本当に心配なのだろう
重い空気は凄まじい速さで浸透していった


「なぁ大石。神崎が入院していたとは?」

「ああ。不動峰は知らないか
実は桜はこの間、部活中に倒れて検査入院していたんだ
ただ、異常はなかったらしいんだけど」


言葉を濁した大石に、真田が顔を上げた


「あいつには持病みたいなものがある
まぁ病ではないのだがな」

「真田も知ってたんだ」

「俺と真田は前から知ってるんだ
それでこの間蓮二たちにも言った」

「俺たち氷帝も知ってるぜ」

「桜が教えてくれたんだC」

「なるほど………それでそんな深刻そうなんだな」

「ああ。異常はないが、桜に何かが起きていることは確かなんだ
それがわかんないんだけど」


すると、スミレが足早にこちらに向かってきた
それに気づいた菊丸がすぐさまスミレに詰め寄る


「桜はどうだったの!?」

「落ち着け菊丸。ちゃんと話すから」


スミレは息を吐いて全員を見回した


「今、榊家の医師が桜を診てくれてな
一応のところ異常はなさそうじゃ」

「でも!!」

「わかっとる
じゃが医師の見立てじゃ立ち眩みはこの暑さ
それから環境が変わったことのストレスだそうじゃ」


しかしどうにも納得がいかないようで、全員何とも言えない表情だ
すると向日が口を開いた


「で、跡部は?」

「ああ。まだ桜についとるようじゃ」

「は!?何でだよ!!」

「諦めぇ。それが跡部やろ」

「………それってどうなんスかね」


忍足の言葉に赤也が面白くなさそうに口を尖らせた
真田は厳しい表情の幸村の肩を叩く


「幸村」

「……真田
ここはさ、桜のためを思うなら、言わなきゃいけないと思うんだ」


彼もまた苦しい経験をした一人だ
だからこそ、言わなくてはならない

例えどう思われようとも

真田も厳かに頷いた


「ああ。手塚がいない今、俺たちが言うべきだろう」


硬い表情で、2人は頷き合った




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