頂を目指す二ノ姫W

□5日目@
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ザワリと、嫌な空気が肌を撫でる感覚がして、桜は顔をしかめた
昨日の夜は、どこか穏やかな気持ちで眠りにつけた
だが、目覚めは最悪だった

嫌な夢は見なかった
だがこの空気は、何かを、予感させる

とても、嫌な予感だ

これは長年の死神としての、戦う者としての経験がなせる直感のようなもの
容易に無視できるようなものではなかった
そしてそれは栞もまた同じ様で、一瞬のうちに義骸を脱いだ


「……ちょっと結界を見てきます
ここ場所として悪いのか結界が張りにくいので
万が一というか、心配なので」

『……うん。そうしてもらえると助かるわ
私も、なんだか嫌な予感がするの』


ジトリと汗が滲む
何かを必死に警告しているようだが、それがわからない
栞は頷き、窓から外へと飛び出していった


『…………胸騒ぎがする…』


不気味な静かさに呟いた声が響いた























朝食を食べに行けば桜に気づいた彼らが安堵したように体の力を抜いた
大石と菊丸が駆け寄ってくる


「桜!!もう大丈夫なのかい!?」

『ええ。心配かけてごめんね』

「いいよ。それより良かったよ…」

「うんうん。あ、そうだ!ご飯は俺たちが取ってくるよ。な、大石」

「そうだな。座って待っててくれ。初瀬も」

『…え?あ、別にいい……』


しかし、桜の言葉を聞かずに2人は離れて行ってしまった
困った桜の肩を改造魂魄の梦が入った栞が叩く


「“ま、いいんじゃない?持ってきてくれるなら
ほら、みんな待ってるよ”」

『あ、うん』


不二が手招きしているのを見て桜は隣に腰を下ろした
その前に栞がひょいと座る
不二が桜の額に手を当てた


「………熱とかはなかったかい?熱中症とか」

『うん。大丈夫。ちゃんとこまめに水分も取ってたしね』

「でも、本当に病院に行かなくて大丈夫?」


河村が眉を八の字にして言えば海堂が仏頂面で口を開く


「…あの立海の部長と副部長が大丈夫だって言ってたっスけど…」

「ああ。あと跡部さんもなんかそんな感じの事言ってたっスね」

『……うん。それなんだけどね』


淡く微笑んだ桜は、栞の後ろにこっちを見つめる幸村と真田の目を見た


『全国大会が終わったら、叔父さんと相談して長い目で検査をしようと思ってね』

「「「!!!」」」


多くの目が桜に注がれる
リョーマが桜の顔を覗き込んだ


「入院…するんスか」

『…こう何度もみんなに心配かけるのもどうかと思ってね
だから決めたの』

「でも、全国大会は見るんだ」

『当り前よ。今年で最後だし、ここまで来たんだもの』


すると目の前に体に優しそうなメニューを乗せたトレーが置かれた
菊丸がにっと笑う


「いーんじゃない?」

「ああ。だがもしまた何かあればダメだからな!これが最後だから」


ピシッと言い放った大石に、桜は約束する、と頷いた
柔らかく笑った大石は栞にトレーを渡すと席に着く
黙って聞いていた乾がふっと笑った


「そうだな。お前がそうやって決めたのなら、もう何も言わないよ」

「うん。それを僕たちが支えていくだけだ」

『支えるのは私の役目
みんなは、たた上を目指してくれればそれでいいの』


そう言った桜に、彼らは目を細めた


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