頂を目指す二ノ姫W

□NEXT STAGE
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一夜明け、悪夢は過ぎ去った
しかしそれはハジマリでしかない
誰も気づきはしないのだ
今はただ、新たなる日に思いを馳せるのみ


桜は制服を身に着け、深呼吸した
今日は全国大会の組み合わせ抽選会の日
部長と副部長はこのまま会場である立海に向かう
それに桜も同行することになっているので制服を着たのだ

桜は机に置かれた携帯を取り、メールフォルダを開いた


『…………国光…』


一番上には、手塚国光の名前
昨日の夜に、彼からメールがあったのだ
桜はギュッと携帯を握りしめた
ほぅ、と安堵の息を吐く


『………良かった…』


腕の怪我は無事完治し、手塚は今日帰って来るというのだ
桜はその報告に表情を綻ばせた
関東大会から今日まで、ずっと離れていた彼が帰って来る
ここまで長い間離れていたことはなかったから、その喜びも一入だ

だが、手放しには喜べないのも事実
昨日の事が頭に重くのしかかる








「君は……誰なんだい?」






「教えて、ほしい」









記憶置換により、彼らの記憶の中には虚と遭遇したことも、
桜たちの正体もないだろう
昨日起こった出来事は彼らの記憶から消え去ったはずだ

虚と桜たちの霊圧により消耗したのか、
彼らは気を失ってから一度も起きることがなかった
一体どういう記憶が植えつけられたか分からないが、それでも、忘れている

だが桜は覚えている
自分に向かう、彼らの怯えが


それが自分と、彼らの違い


彼らは今の時を生きているが、桜は過去に取り残された異物である
本来なら、もう、交わることなどないのだ


『………』


合宿中、丁寧に畳まれて仕舞われていたジャージを荷物の一番上に置く
小さなしわを手で伸ばし、桜は呟いた


『やっと…返せるわね』

「桜ちゃーん!!準備できたー?ロビーに行こ〜!!」

『ええ。今行くわ』


ドア越しに栞に呼ばれ、桜は大きく返事をした























「あーあ。昨日は折角最後だったのに」

「仕方ないよ英二。突然の嵐だったんだから」


ぶすっとした菊丸を不二がなだめる
そこかしらで口を尖らせている者がいた


「クソクソ!室内コートは整備中だったしよ」

「もう少し他の人たちと試合したかったですね」

「まぁ全国が始まるし、緊張感を高めるっていう点ではよかったな
それに、刺激になったし」

「でもずっと筋トレは流石にいやだったな〜」


彼らの言葉に桜と栞は顔を見合わせた
何とも微妙な空気が漂う


「(この程度ですんでよかったですね)」

『(ええ。亮の怪我も治ってるみたいだし)』


元気そうな宍戸の姿を見て桜は息を吐く
大丈夫だと分かっていても、ちゃんと見るまでは心配だったのだ




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