頂を目指す二ノ姫X

□大石の決断
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部室前で、桜とスミレに挟まれた手塚が整列した部員の前で口を開いた
久しぶりに感じる緊張感に全員の背筋が伸びる


「皆。関東優勝おめでとう!
弛み無き努力、そして誰もが諦めなかった結果だ」

『(フフッ懐かしいわね。それに国光も気合入ってる)』

「しかし全国は思っている程甘くはない!決して油断はするな!」

「「「はいっ!!」」」


全員の返事が空に響き、桜は口角を上げた
スミレが一歩前に出る


「そこで今日は急遽ランキング戦を行う!全国で戦う最強の8人を…」





「ちょっと待って下さい…」





そう言ったのは大石で、ラケットを持った彼はスミレと手塚の前に出る
桜はジッと大石を見た


「俺達は関東を制しました!
今勢いのあるメンバーをこの前日という時期に替える事が
どれだけメンバーの士気に関わるか」

『…………』

「ええ〜っ!?大石先輩それって…」

「手塚部長抜きでやるって事ですか?」


部員は唖然とした面持ちで大石を見る
桃城も声を荒げた


「大石先輩だってあんなに手塚部長の帰りを心待ちにしてたじゃないっスか!!
そもそも俺があん時ランキング戦で負けたのに
代役でレギュラーとして試合に出させてもらってたんだし……俺が」


表情を険しくさせて、苦い感情を押さえてそう言う桃城
だが大石は桃城に笑った


「桃…出たいんだろ?無理をするな」

「…で、でもっ!」

「違う…俺は"怪我が完治していない人間"を…
レギュラーとして認める訳にはいかないと言ってるんだ!」


ざわつく部員を前に、桜は目を瞑った
彼の気持ちが痛いほど分かる


「手塚…お前にはこれから俺と試合をしてもらう。ただしシングルスだ
1ゲームでも落とす様な事があれば俺はお前のレギュラー入りを認めない
いいですか先生、桜」

「ちょっと大石何考えてんだよ!!正気か!?」


手塚も大石の気持ちが分かったのだろう
真剣な目を向けた


「俺は構わないが容赦はしないぞ」

「望むところだ」























菊丸はフェンスを掴んで震える声で言った


「ちょっと〜っ何か凄い事になっちゃったよ乾!?
いったいどっちが…」

「手塚!」

「手塚!」

「手塚部長っス」


乾が、不二が、海堂が口をそろえて言う
だがリョーマだけは違った


「………大石副部長」


踵を返すリョーマの背中を、桜は目で追いかける
彼もまた、大石の気持ちに気づいていた


『…………秀』


誰よりも、手塚の帰りを心待ちにしていたはずの大石
2人がコートで相対する


開始早々手塚のサーブがコートを抉る
大石は動けなかった



「《15−0》」


『(…速い……力強さも増したわね)』

「ナマってはいない様だな……手塚。さあ来い!!」


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