頂を目指す二ノ姫X

□大石の決断
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怪我を治した手塚が、今よりもはるかに力をつけ帰って来た
それを部員が目の当たりにする試合運びとなっていた
どの球も力強く、鋭い。桜も目を細める
だが最後になって大石も盛り返してきた



「《40−30!》」


「こ、このポイント、俺が獲ればお前は1ゲーム失うぞ」


しかし手塚が全く汗をかいていないのに対し、大石は息が上がっていた
その差は歴然だった。しかもそれだけではない
ボールをラケットがとらえたと同時に大石の表情が大きく歪んだ


「うぐっ!!クソッ!!(こんな程度の痛みで……)」

「大石先輩右手首押さえてる!?」

「まさか関東大会前の手首の怪我が………!?」


右手の痛みでボールが打ち返せず、そのままではアウトになってしまう
だがそのボールは唐突に軌道を変えた





「完治していなかったのはお前の方だろ…」





「手塚ゾーン!?」





引き寄せられたボールを手塚が打ち返した
力の入らない手で大石が打ち返し、全く打球が飛ばない
だが、それもまた引き寄せて打つ


「(…手塚)」

『秀……国光』


彼らには、目標があった
多くの苦楽を共にしたからこそ、その目標は今、眼前に迫っている
だからこそ、彼らの思いは一つだ








手塚君がいれば絶対関東へ行けるのになぁ





テメェ先輩を何だと思ってんだ





ラケットは人を傷つける為にあるんじゃない!!





大石君ごめん。桜も





俺達の代では絶対に青学を全国へ導いてやろうぜ





そんな部活なら…オレ、辞めます





こんな程度の事で諦めてどうするんだよ!





手塚君。キミがやめるんだったらボクもやめるぞ!





……全国。連れてってくれるんでしょ?





手塚君。キミには…青学テニス部の柱になってもらいます









「《ゲームセットウォンバイ手塚 6−0!!》」



試合は終わり、手塚の完全勝利が決まった
その瞬間、部員から惜しみない拍手が手塚と大石に向けられた
長く手塚の不在を守った大石と、帰って来た手塚に向けて


「すまない手塚。こんな形でしか……」

「……分かっている」


手塚と握手を交わした大石は、桜とスミレに言う


「これが全国で勝てる最強メンバーです、竜崎先生、桜」


桜はギュッと拳を握った
大石は笑っているようにも、泣いているようにも見えた


「皆、明日から全国だ
油断せず……そして自分達の力を信じよう!!」


「「「オオーッ」」」



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