頂を目指す二ノ姫X
□大石の決断
3ページ/5ページ
怪我を治した手塚が、今よりもはるかに力をつけ帰って来た
それを部員が目の当たりにする試合運びとなっていた
どの球も力強く、鋭い。桜も目を細める
だが最後になって大石も盛り返してきた
「《40−30!》」
「こ、このポイント、俺が獲ればお前は1ゲーム失うぞ」
しかし手塚が全く汗をかいていないのに対し、大石は息が上がっていた
その差は歴然だった。しかもそれだけではない
ボールをラケットがとらえたと同時に大石の表情が大きく歪んだ
「うぐっ!!クソッ!!(こんな程度の痛みで……)」
「大石先輩右手首押さえてる!?」
「まさか関東大会前の手首の怪我が………!?」
右手の痛みでボールが打ち返せず、そのままではアウトになってしまう
だがそのボールは唐突に軌道を変えた
「完治していなかったのはお前の方だろ…」
「手塚ゾーン!?」
引き寄せられたボールを手塚が打ち返した
力の入らない手で大石が打ち返し、全く打球が飛ばない
だが、それもまた引き寄せて打つ
「(…手塚)」
『秀……国光』
彼らには、目標があった
多くの苦楽を共にしたからこそ、その目標は今、眼前に迫っている
だからこそ、彼らの思いは一つだ
手塚君がいれば絶対関東へ行けるのになぁ
テメェ先輩を何だと思ってんだ
ラケットは人を傷つける為にあるんじゃない!!
大石君ごめん。桜も
俺達の代では絶対に青学を全国へ導いてやろうぜ
そんな部活なら…オレ、辞めます
こんな程度の事で諦めてどうするんだよ!
手塚君。キミがやめるんだったらボクもやめるぞ!
……全国。連れてってくれるんでしょ?
手塚君。キミには…青学テニス部の柱になってもらいます
「《ゲームセットウォンバイ手塚 6−0!!》」
試合は終わり、手塚の完全勝利が決まった
その瞬間、部員から惜しみない拍手が手塚と大石に向けられた
長く手塚の不在を守った大石と、帰って来た手塚に向けて
「すまない手塚。こんな形でしか……」
「……分かっている」
手塚と握手を交わした大石は、桜とスミレに言う
「これが全国で勝てる最強メンバーです、竜崎先生、桜」
桜はギュッと拳を握った
大石は笑っているようにも、泣いているようにも見えた
「皆、明日から全国だ
油断せず……そして自分達の力を信じよう!!」
「「「オオーッ」」」
.