頂を目指す二ノ姫X

□大石の決断
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運命は変わらない
だが、彼らは乗り越えていく
レールの上を走っているとも思わない
ただひたすら、望む未来のために
彼らは立ち上がる


「筋一本でも動かせば」








「即座に首を刎ねる」








『それはどうかな?』








…貴様が見た通りだ








「こんな形で再び見えることになるとは思わなかったよ」








私が天に立つ















…黒崎一護

――――礼を言う
















―――――
―――


『!!!』


視界がクリアになり、桜は勢いよく上体を起こした
乱れる息を懸命に整えようとするが上手くいかない
だが、それはいつもと違い嫌な感じではなかった
桜はきゅっと目を瞑って手を握りしめた
胸の奥が熱い


『(一護………っ)』


視えたのは、過去の出来事だ
満身創痍ではあるものの、彼らは生きていた
そのことが、今の桜には何よりの喜びだった


『よかった………本当に……よかった……』


運命は変わらないのかもしれない
けれど今は、彼らの無事を喜ばせてほしい
それが、次に繋がるから





そのままの状態で座っていたが、数分経った頃には落ち着いてきた
息を吐き、目元を和らげた桜が時計を見れば午前5時前


『……国光起きてるかしら』


今日も部活がある
手塚にとっては関東大会初戦以来の部活だ
気合が入っているだろうし、朝のトレーニングを行う確率は高い


『………私も走ろうかな』


するとまるで狙いすましたかのようにドアがノックされた
返事をすれば入って来たのは手塚だ
桜とは違いすでにウェアに着替えている
一体いつから起きていたのだろう


『おはよう国光。早いわね』

「…おはよう桜
すまない。起こしてしまったか?」


まだ着替えていない桜を見て手塚が眉間にしわを寄せて言った
桜は笑って首を振る


『大丈夫。その前から起きてたわ
どうしたの?』

「ああ。早く目が覚めたから少し出てこようと思ってな
桜がどうするか聞きに来たんだが…」


桜も朝走ることが多いからの問いかけだ

しかしそう言った手塚が渋い顔をした


『国光?』

「……何かあったか?」

『え?』


訳が分からずに首を傾げる
手塚はジッと桜の顔を凝視した


「……いや………疲れたような顔をしているからな
よく眠れなかったのか?」

『そんなことはないけど…』

「そうか。だがもう少し寝ておけ
弁当は母さんがきっとお前の分も作ってくれるだろう
帰ってきたら起こしてやる」

『え、別にいい…』


断ろうとした桜を手塚の静かな目が射抜いた
反論は許さないと目が語っている


『(どこで覚えて来たのよ、それ)』


こうなった手塚には従うのが吉だ
桜は頷いた


「よし」


満足そうな雰囲気になった手塚は桜が横になるまで動こうとしない
桜の性格を分かっているからこその行動だ
桜は渋々横になり、タオルケットをかけた


「行ってくる」


横になった桜の頭を撫でて、手塚は部屋を出て行った
桜はこうなればもういいや、と諦めてそのまま目を瞑った

どこか心が温かかった



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