頂を目指す二ノ姫X

□たった一人の攻防
2ページ/5ページ





ゴッ




『なっ……』





オジイィッ!!





「ゴメンちゃい」





ベンチから倒れ落ちるオジイ
甲斐がボールをオジイ目がけて打ったのだ
ボールはオジイの顔面にぶつかった
もちろんわざとではないと言い逃れはできる
だが、桜は見ていた
彼に指示する、その時を


『(オジイ………)』


係員によって担架で運ばれていくオジイ
部員たちがそれに付き添っていく
どの声もオジイを心配していた
桜は拳を痛いほど握りしめ、フェンスを殴った




ガシャンッ!!




「さ、桜先輩……」

「桜………」

『………………』


その目には、凄まじいほどの怒りと、悲しみがあった
かつてないほど激昂した桜に、手塚も目を細める
桜は、目を瞑った















「久しぶり〜だね〜」

『……ええ。頼みがあって来たの』

「………ソレぇのこと〜?」

『いいえ。これには満足してるわ。違うことよ』

「………」

『お願い。何も聞かずに、頼まれてほしい……』

「…うん………いい〜よぅ」
















一人残らずオジイに付き添っていったと思われていたが、この男だけは違った
ラケットを握りしめ、一人佇む


「あい?やぁーは行かんばぁ?
(あれ?お前は行かなくていーのか?)」





「一つやり残した事があってね」





佇む佐伯に、甲斐は息を吐いた
まるで仕方ないというように


「あいひゃ〜」

「たった一人残ってまだやるつもりかアイツ」

「他の奴等と一緒にジイさんに付き添うフリして逃げれば良かったのに!」

「ちばととっこー
(頑張るねー)」

「アッハッハッ!!」


ギュッと桜の眉間にしわが寄った
それを見て手塚がフェンスに殴りつけた桜の手を取り、宥めるように離す





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ