頂を目指す二ノ姫X

□たった一人の攻防
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すると桜は、これまで一度たりとも部員に見せたことがない、
それこそ絶対零度と口を揃えて言えるほどの冷笑を浮かべた
それに縮み上がったのは何も菊丸や桃城だけではない
大石も海堂もリョーマも不二も、そして手塚でさえも背筋を凍らせた
手塚は思わず桜から手を離す
それを気にした様子もなく、桜は彼らにその表情を向けた


『貴方たち、行くわよ?』

「「「ラ、ラジャ」」」


最敬礼の姿勢を取った桃城とリョーマが我先にと走り出す
だが2人ともフェンスに手をかけた時には表情を戻した
あんな奴らになめられては困る


「うっし。いくか越前」

「ウィース」


そして、中に入った


「え〜ぬぅーやるばぁーがーいったゃあ!?
(何だお前ら!?)」






「「六角臨時応援団参上!」」






「「「せ、青学っ!!」」」






入ってきた青学レギュラーに比嘉の部員たちが気色ばむ
桜と手塚は、審判に向かって頭を下げた


「試合を中断してしまって申し訳ありません」

『顧問の容体を心配した六角の部員たちは病院に向かってしまいましたから、


その代わりで入ってもかまいません?


疑問の口調はしかしただの確認だった
桜の背後に般若が見え隠れしている
それを感じ取ったのか、審判は青い顔をして頷いた


「あ、ああ。構いません。どうぞ」


その様子を見た河村は冷や汗を流して不二に小声で言う


「さ、桜………凄い怒ってるね……………」

「……今まで、ここまで怒ったことって……あれかな
2年生の時の地区予選の時かな」

「………でも、あの頃より凄味が増してるよね……」

「……うん………」


しかしそれは全て振り払い、一人戦いに臨む佐伯を見た
菊丸が頭を振って声を張り上げる


「佐伯ぃーっガンバガンバ!!」

「あんな汚ねぇ連中に負けちゃいけねーな、いけねーよ」


菊丸に続いて桃城も言う
それを面白くない者たちがいた


「何だお前らーっ同じ関東だからって中まで入って来て」

「六角中の応援するたぁいい度胸じゃねーか」

「あ゙?」


青学の応援に絡む比嘉の部員を、海堂が一睨みで黙らせた
その後ろで桜もウフフフフ、と笑っている


『全く、最近のガキはどうしてこう口が悪いのかしらねぇ』

「……桜。お前も口が悪いぞ………」


実際のところ、桜の圧力に口を噤んだ比嘉勢
手塚も見たことのない桜に内心冷や汗をかき過ぎていた
桜の口調が乱れたのにも驚けない


「人数は少ないけど心強いと思うよ」

「うおお六角グレイトーッ!」

「サーエーキーサーエーキー!」

『頑張ってサエ!!』


誰よりも最初に立ち直った不二が柔和に笑い、いつの間にかラケットを持った河村が叫ぶ
佐伯はそれを受け、ギュッとラケットを握った
突破口を見つけるために、そして次に繋げるために、甲斐を左右に走らせる

しかし




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