頂を目指す二ノ姫Ⅴ
□一撃必殺ビッグバン
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でたらめな速さと重さがリョーマを襲い、ラケットを吹き飛ばした
桜は破壊力のあるそれに目を細める
『(やっぱり簡単には通してくれないわね)』
「一撃必殺サーブ……ビッグバン！」
その凄まじいサーブに比嘉が勢いづく
桜はふぅ、と息を吐いた
視線を感じて目を向ける
「アレがある限り彼はサービスゲームをキープし続ける」
木手が桜を見てそう言っていた
甲斐もそれを見て笑みを深くする
「つまり…負けないって事だばぁ」
『フフッ。面白いわね…』
桜の低い声に、部員はビクッと肩を震わせた
桜はクスクス笑いながらリョーマを見た
立て続けに点を取られていて、その全てがサービスエース
リョーマの頬を汗が流れる
「へぇ…やるじゃん」
「！」
「…見ろ。越前の位置を」
『あら』
「打球の威力が弱まる後ろに下がって返す気だ！」
サービスラインよりさらに下がった位置でボールを待つリョーマ
活気づく比嘉の歓声が溢れる
「下がって返さりぃほど甘こーねぇらんどぉー！！」
田仁志のビッグバンが迫る
リョーマはスライディングして飛び上がり、ドライブＢで打球を前に打とうとするが
「ゲーム田仁志１－１！！」
ボールを何とかラケットに当てて前に打つが、ボールは力なく転がり落ちた
「なーんだ」
桜は座り込むリョーマを見て、足を組み変えた
微かに彼が笑ったように見えて口角を上げる
『(まぁ、あちらの狙いは読めたわね)』
大石は愕然とした様子でコートを見下ろした
「一撃必殺サーブビッグバン
越前のドライブＢでも…打球が飛ばないなんて」
得意げな田仁志は声を張り上げる
「比嘉中ぅーっ！！」
「「「はいでぇーっ！！」」」
活気づく応援に比嘉の面々は余裕の笑みを浮かべた
特に甲斐はニヤリと笑いフェンスに腕を置き寄りかかる
「一気に試合の流れを引き戻したさぁ」
「これからだばぁ。ビッグバンが利いてくるのは…」
「慧くんのビッグバンは絶対だ
自分のサービスゲームをまず落とす事は無い
そうなると相手のチビは
自分のサービスゲームは絶対に落とせないというプレッシャーに押し潰される
ぬーやらこの勝負…見えたな！」
しかしそう言う甲斐に知念寛が言った
「いーや、待てぃ……
アレを受けてラケットごと吹き飛ばなかった奴が他にいたっけさあ？」
「ボールがわずかながら前に飛んだね…
あの１年生やりますねぇ」
そう零した木手は、それに、とベンチに目を向ける
「あの有名な“見抜く者”が使ってきた１年生ですからねぇ
油断はできません」
「でもよ永四郎
そんな有名な女がいたにもかかわらず、青学は去年全国にも行けなかったんだろ？」
馬鹿にしたように甲斐が桜を指差して笑う
「ってことはよ～
その“見抜く者”も青学も、大したことねぇーってことだろ！」
「………甲斐クン。私の話を聞いていましたか？
油断は禁物だと言ったのですが」
鋭い木手の眼光に、甲斐は肩をびくつかせて頷いた
木手は息を吐いてメガネを直す
「まぁ、彼女にどれだけのことが出来るかは知りませんがね」
その目はまた桜を射抜いていた
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