夜空を纏う四ノ姫3

□夜襲
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「……何事だ?」

『……………騒がしいわね』


桜と柳は同時に口を開いて怪訝な顔をした

2人はとある装置の最終チェックを行う為に研究室に籠っていた
しかし途中桜にまた発作らしきものが起こったのだ
柳に心配されつつ横になっていたのだが、あまりの騒がしさに身体を起こした


「………大丈夫か?」

『……ええ。今回は短かったわ』

「だが、それにしては間隔が……」

『…………まだ、大丈夫よ』


とは言ったもののやはり考えるまでも無く間隔が短くなり、そして回数が増えている
桜は髪を掻き上げ拳を握った


『(本当に……リミットが迫ってるのかもね……)』


フゥ、と息を吐き、桜は柳を見た
彼は立ち上がっていた


『行ってみる?』

「ああ。気になる事がある。桜は待っているか?」

『………ううん。私も行くわ』

「そうか…無理はするな」


心配そうに柳は桜に手を差し出す
桜は目尻を下げて、その手に掴まった
ぐいっと身体が引っ張られる


「これだけ騒がしいとなれば入江が何か絡んでいるだろう
第一通信司令室に行くか」

『そうね』


並んで2人は司令室に向かった
入口には中の様子を見つめる跡部と白石がいた
2人は桜と柳に気付いて目を向けた


「よう、最終チェックは済んだのか?」

『まぁ、大方……』

「済んではいるが、桜の発作が起きてな」

「「!!」」


跡部と白石の息を呑む音が聞こえ、桜はばつの悪い顔をした
思わず柳を睨みつけるが、柳はどこ吹く風だ


「……お前、本当に大丈夫なのか?」

「ちょっと多すぎちゃうか?」

『……まだ大丈夫よ。心配しないで』

「せやけど……」

「……無理だけはするんじゃねぇ」

『…はいはい』


跡部の苦しげな表情に桜は一瞬怯み、顔を背けた
彼のこんな表情に桜は弱い

すると、中央に立っていた手塚が気付いて近寄って来た


「来たのか」

「ああ。今どういう状況だ?」

「……ボンゴレアジトを発見した」

「『!!』」


桜と柳がハッとして中央を見た
入江が指示を出している
桜はつかつかと彼に歩いて行った


『正一』

「あ、桜」


桜の声に振り向いた入江
その表情は見た事も無いほど引き締まっている
桜は、その入江の雰囲気に薄く笑った
覚悟を見せつけられているようだ


「今、ボンゴレアジトに攻撃を仕掛けているところだ」

『アジト、見つけられたのね』

「……真田がグロ・キシニアの様子を見に医務室に行ってな
それで奴が発信機をクローム髑髏に取り付けている事が分かった」

「それで検証してみた所、確実性が高いと判断した」


跡部と手塚が後ろから言う
入江は頷いてジッと桜を見た


「これでボンゴレリングを奪取出来るよ」

『ここまで、長かったものね……』

「今どの程度進んでいる?」

「掘削作業は終わって、さっき突入指示を出した
もう侵入してると思うんだけど」

「入江様!」

「ああ……すまない桜。楽にしててくれ」

『ええ。ありがとう』


部下に入江が呼ばれ、桜は頼もしい入江の言葉にフッと笑った
手を振って彼に背を向けると跡部と手塚が付いて来る
桜は手塚に顔を向けた


『周助とか赤也とかはどうしたの?』

「赤也は弦一郎とアフェランドラ隊とともにいるはずだ
先程行くと言っていた
周助は謙也と医務室か、もしくは自室だろう」

『そう………なら、貴方たちに命令よ』


その瞬間、彼等の動きが止まった
緊張感をはらんだ空気が流れ、離れていた柳と白石も駆け寄った



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