頂を目指す二ノ姫X
□読む男と読めない男
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それからも、桃城は順調にゲームを取っていった
『(っていうかすんなりいきすぎな様な気も……)』
「…だから大丈夫だって」
「(やはりコイツ。風の動きまで完全に把握して…)」
「《ゲーム桃城3−0!!》」
忍足に全く自分のプレイをさせない桃城
その成長度合には目を見張るものがある
氷帝の部員は驚きの表情でそれを見ていた
「ど、どうなってんだ!?」
「完全に攻めてるのは忍足なのにな」
「くせ者…」
跡部も目を細め桃城を観察するように見ていた
「今のアイツは風の動き・打球音・そして忍足のしぐさ
呼吸・目の動き等から相手の心理状態まで読みとってしまう程洞察力が研ぎ澄まされてやがる」
「マジ〜〜ッアイツ凄っげーっ」
「伊達に修羅場は潜ってねーって事か」
桃城のロブに忍足がチャンスとばかりにラケットを振りかぶる
しかし頭上には太陽があり、ボールと重なってしまう
『(うまいわね)』
「(しもた!太陽の位置まで…!
ほなら影さえあれば十分や…)」
ボールを見失った忍足だがそれで終わらない
素早く地面に目を落とし、ボールの影から位置を特定するが
「(――自分の影でボールの影を)」
ネットの前で跳んだ桃城の影がボールの影を消した
足元に落ちるボールに忍足はなすすべもない
乾は桃城のプレイに生唾をのみ込んだ
「桃…ついに自分の最大の武器を自覚したか」
『その類稀なる洞察力と視野の広い判断力によって相手の心理状態まで読む…か
開花したわね』
ゲームカウントは4−0
青学はのりに乗っていた
応援していた黒羽も声を張り上げる
「いけーっ桃城!このままぶっちぎれ―――っ!!
なんならアレお見舞いしてやれ!」
「あいよっ」
そう答えサーブの構えをした桃城はハッとした
忍足の様子が変わっていたのだ
その変化に思わずラケットを持つ手に力を込める
「(この人、見えねぇ……急に心の中が読めなく………)」
ドッ
『!!』
桃城のサーブが放たれた
しかしそれはものの数秒もせずに桃城の足元に返って来た
驚愕する桜の前で、忍足は不敵に笑った
「かなわんなぁ桃城…」
周囲が呆気にとられる中、桃城は顔を上げた
その表情は晴れやかだ
「……そうっスよね
やっぱ、そうこなくちゃ面白くねぇ!だらぁ!!」
桃城の豪快なサーブを忍足がラケットを大きく振って待ち構える
しかし桜は渋面を作った
跡部も面白そうに目を細めた
「(桃城……
お前のその自然と一体化し、
相手の心理状態まで見えてしまう程研ぎ澄まされし洞察力は認めてやろう)
だが相手が悪かったな
残念だがウチの天才プレーヤーは…
心を閉ざす事が出来る」
「F&D」
「《ゲーム忍足1−4》」
普通のショットかと思いきや、意表をついてのドロップショット
その違和感のない流れるような動きには感嘆しかない
向日も嬉しそうに声を上げた
「あははっ。完璧じゃん侑士
今のフェイクアンドドロップショット!!」
「彼、上手いね…」
「完全に流れを止められたな」
不二と手塚は厳しい表情だ
腕を組んだ手塚は忍足を見て一言言った
「随分とポーカーフェイスな奴だ」
「………」
『えぇ〜……』
思わず不二と桜は手塚を見た
忍足も手塚に言われたくはないだろう
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