頂を目指す二ノ姫X

□読む男と読めない男
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続いて忍足がサーブを打ち、桃城がそれを打ち返す
するとその逆サイドに容赦ない忍足の返球が突き刺さった


「F・A・S」

「忍足先輩のフラット・アプローチ・ショットは構える暇さえも与えないぜっ!!」


さらにS・S・A・S(サイド・スピン・アプローチ・ショット)も繰り出される
どんどん桃城は劣勢に追いやられていく


「圧倒的強さだ。『千の技を持つ天才』忍足侑士!!」

「くっ入るのかっ!?」


ボールを追い、桃城が走る
ライン内に入ったボールが目の前を過ぎ去っていく
だが、勢い余って桃城は照明の柱にぶつかってしまった
桜は反射的に立ち上がった


『桃っ!!』


「《ゲ、ゲーム忍足5−4…》」



慌てて駆け寄る部員
桜は誰よりも早く駆け寄った
額から出ている出血に救急箱と叫んだ

しかし、リョーマの動きに顔を上げた
そして、ため息をつかざるを得なかった






「暴れ足んないっスよね桃先輩」






桃城のラケットを拾い上げたリョーマが、それを桃城に渡していた
桃城はそれを受け取り、リョーマを見上げた


「何だよ越前。10分で倒してこいって事かよ」

「…もち」

「先輩をもっと労れよ」

『ちょ、桃、治療は!!』

「後でいーっスよ桜先輩!」


ラケットを肩に担いだ桃城は桜の制止を聞かずに行ってしまった
桜はハァ、と息を吐いてリョーマの帽子をぺしっと叩いた


「……最近桜先輩、手がよく出るっスよね」

『元々よ。みんなが私をよく知らないだけ』


肩を落としてベンチに座る
桃城はコートで凛々しく立っていた


「何だアイツ不死身かーっ。まだやるつもりだ!?」

『不死身なんかじゃないっての…』


桜は腕を組んできゅっと口を引き結んだ
跡部が様子を見ていた忍足を呼ぶ


「忍足…」

「分かってるわ跡部!
アイツらホンマ何してきよるか分からへんからな」


チラッと桜を見た忍足がボールを頭上に放つ
桜は唇を噛み締めた


「ほな全力で仕留めるで!」

「(やっぱ俺にはこれしかねーよな――)」


グッと目に力を込めた桃城はボールにタイミングを合わせて跳んだ
フォアハンドでしかも両手打ちのそれは


「おらぁっ!!」

「ジャックナイフだっ!!」

「(なる程……くせ者やな
前半70%の力で相手の目をその速さに馴れさす事で
100%の力をそれ以上に演出する事が出来るわなぁ桃城)」


忍足が桃城の打ったボールをロブで返す
それは罠だった


『(侑士には、周助と同じアレが……)』

「駄目だ桃。スマッシュは…」

「(せやけど…奇遇やなぁ……俺もここまで70%やったわ!)」

『!!』


しかし、桃城の放ったダンクスマッシュが忍足のラケットを弾き飛ばした
羆落としを繰り出そうとしていた忍足はその威力に呆然とした


「(アイツこれまで70%なんかやないわ。40%か30%…)」

『(強くなってる……それも………急激に………)』

「どどーん!」


まるで底なし
どんな試合も吸収して自分の糧にし、飛躍する桃城に桜は最早声を失った
もう、言えることはない
ただひたすら、彼らの勝利を信じて見守るだけだ


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