頂を目指す二ノ姫X

□読む男と読めない男
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忍足はラケットを握りしめ、桃城を見ていた


「(…あの時からや
あの時からずっと消えへんモヤモヤの理由が分かったで)」


関東大会、青学との試合
ダブルスの試合で負けた時から感じていた、この想い
誰に勝っても晴らせなかった、奥底の霧


「ええ加減お前を倒さへんと






頂点へ行かれへんわ、桃城!!






それは今まで静かに、そして冷静に試合に臨み、
何においても感情を極端に表さなかった忍足の、心の声だった
普段の彼とはかけ離れたその姿が、彼の思いを表している


『(……貴方のそんな姿、久しぶりよ侑士)』


桜はがむしゃらにボールを追いかける忍足に思わず微笑んだ
桃城も、忍足、そして氷帝の気迫を感じ取り、強引にボールを打ち返す
多少の無茶は、この際目を瞑った
あとで桜に怒られるだろうことを理解して
そうでなければこの試合、そしてこの氷帝戦、負けるだろうと理解していた


「(二度負けるつもりはない氷帝は、
このリベンジにプライド、油断、過去の栄光など
全てをかなぐり捨てて挑んで来ている
だからこそ…)






俺は負けられない!!






そんな様子の桃城を観察する跡部はにやっと笑った


「(バカめ…桃城の傷は思ってるより深い
分かるな忍足…持久戦でいけ!!)」


しかし、そんな跡部の思考を感じ取り、桜は苦笑した


『(まだまだね、景吾)』





「はぁっ!!」





「どらぁ!!」





「せやっ!!」





激しい掛け声とともに鋭く空気を切り裂くラリー
向日は忍足を見て、パートナーだからこそか彼の心情を読み取った


「(侑士…………お前…)」

「バカが…熱くなりやがって」


忍足は持久戦にしようだなんて、これっぽっちも考えていなかった
一球一球に、自分の持てる力を込め、渾身の力で打っていた
最高の力で、相手を倒すために


「(悪いな跡部。こんな男滅多におらんのや)」


激しいラリーの中で、桃城はさらに力を込めていた
桜はその一瞬一瞬を見逃さないように目を凝らす


『でも、もう………』


そして桃城にロブが上がった





「お お お お お お お お お 」





桃城の渾身のスマッシュ
忍足がボールを捉える






「(お前だけは俺が…)」






忍足のラケットが吹っ飛ばされる
青学は歓喜に包まれた。しかし





ボールは、桃城の背後、ラインの内側に軽い音とともに落ちた





「《ゲームセットウォンバイ忍足6−4!!》」



桜は桃城の姿をその目に焼き付けた
彼のプレーに感嘆させられっぱなしだった


『………ハラハラさせてくれるわね』


桃城は尻餅をついて忍足を見上げた


「アレ返されちゃたまんねーや」


忍足に手を伸ばす
その表情はどこかからかうようだった


「…ところで、けっこう熱い人なんスね見かけによらず」

「………アホか…」


忍足は苦い表情で桃城の手を握った



→atogaki
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