頂を目指す二ノ姫X

□己との戦い
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乾はその樺地の様子にハッとした


「な、なる程…
あの樺地にとって自分の打ったボールがそっくりそのまま返ってくる
信じられないんだ………」

「彼にとったら初めての体験だろうね」

『そうね……彼は吸収する側であってされる側じゃなかったもの』


百錬自得の極みを使う手塚は圧倒的だった
続けざまに3ゲームとり、ゲームカウントは5−0だ


「つ、強い。強すぎる!?」

「圧倒的なこの強さ!!」

「これが完治した手塚国光!!」


唖然とする氷帝部員だが、驚いているのは青学も同じだった
驚愕の眼差しで手塚を見る大石たちに桜は息を吐いた


『青学に入学した頃にはね、もう「百錬自得の極み」の原型はできてたの
でも、その後すぐ怪我をしたからずっと使わないように言っていたのよ』

「…手塚は常に自分に厳しく、そして常に上を見ていた
そしてケガとの孤独な戦いに真摯に向き合って、
その一方で誰よりも部の事を考え、チームを導いて来たんだ」


大石がしみじみと言った
そこにはここに来るまでの思いがあった

それは同時に彼らの様々な思いも語っていた


「キミの強さの底が見えないや」

「データでは計りきれない男だよ」

「俺からしたらお前は憧れさ」

「テニスの鬼って感じ…」

「尊敬するっス」

「いつか倒させて貰うっスよ……絶対に」

「………」


手塚の強さを再確認した青学

しかし、樺地の右腕が突如オーラを纏った
それは手塚と寸分違わず、百錬自得の極みだった


『………まさかここまで…』

「遅かったな樺地
これは案外苦労した様じゃねぇか」


そう言った跡部は余裕の笑みで手塚に視線を向けた


「何の為に樺地をお前にあてたのか
まだ分かってない様だな…手塚」

『(………本当に侮れないわね…景吾は…)』


桜が口を引き結ぶ
すると、桃城がカラッと晴れた空を見上げて呟いた


「ひと雨来るぞ…」

「ひと雨来るって、桃ぉ…めちゃ晴れじゃん?」

「…10分後くらいっスね」


桃城の呟きに菊丸が怪訝な顔をして同じように空を仰ぐ
しかし河村は菊丸に諭すように言った


「英二。桃が言うんだ。間違いないよ」

「んじゃそれまでに決着つけないと……」

「ああ。でも…」

『そう簡単にはいかないわねぇ』


ゲームカウントは5−0と手塚が断然有利
しかし、百錬自得までも吸収した樺地が相手なのだ





「勝つのは氷帝です!!」





完璧に百錬自得までも繰り出す樺地
手塚の倍返しをさらに倍返しにして手塚に返している
また振出しに戻ってしまった
しかも、パワーは樺地の方が上なのだ

そして、手塚に樺地を当てた跡部の狙いはここだった

「(手塚……たしかに俺様と戦った時より格段に強くなってやがる
だが強くなればなる程自分の首をしめていく事にようやく気付いた様だな)」

『………まるで自分と戦っているかのよう……か』

「あがいても人は自分自身には勝てねぇ!良くて引き分けだ!」


怒涛の勢いで樺地がゲームを取って追い上げてくる
おまけに雨まで降りだした
激しくなっていく雨の中、試合は続いて行く
大石は堪らずに叫んだ


「もういい手塚ッ!!この試合は捨てるんだぁーっ!!






手塚ぁーっ!!






桜は大石の叫びを聞き、頬に張り付く髪を払いながら手塚を見続けた
気にも留めずボールを追う姿に、確信があった


『秀、無駄よ。国光が逃げるはずがないわ
例えもう一度腕を痛めたとしてもね……』


手塚の性格が分かっているからこそ、それが分かる
桜はギュッと目を瞑った。その時、



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