頂を目指す二ノ姫X

□己との戦い
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青学をずっと応援していた六角中の面々は、その試合展開に真剣な表情を浮かべた


「シングルス3桃城VS忍足は氷帝の勝利…
そして今のダブルス2乾・海堂VS向日・日吉は逆転で青学勝利」

「1勝1敗、互角だ……」


「《これよりシングルス2の試合を始めます!》」



桜は目を閉じ、彼が動くのを待っていた
目の前に立つ気配に顔を上げ、ニッと笑う


『行ってらっしゃい』

「ああ」


渡されたジャージを桜はそっと撫でた
そして周囲はコートに立った男に驚きの声を上げた


「なっ!?」






「手塚がシングルス2で出てきたーっ!?」






「どー言う事だ……」


宍戸も目を丸くさせる
多くの視線が桜に向けられるが、桜はジッと手塚を見ていた

一方、氷帝の選手は感情の見えない表情で手塚とネットを挟んで握手した


『(………ここで樺地君が来るとか……
まぁ予想はしてたけど……)』


桜は微かに目を嫌そうに細めた
しかしすぐに足を組み、顔つきを変えた
そこにあるのは手塚への信頼


「いい試合をしよう」

「………」


「《ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ 手塚サービスプレイ!!》」



最初は手塚からのサーブだ
跡部はボールを宙に投げる手塚にフッと笑った


「(やはりシングルス2で来たか、手塚………
桜よ。この試合をよく見ておけ)」


桜に目を向けた跡部は挑発するように口の端をつり上げた
そして、サーブを放つと同時に指を鳴らす


「い゙い――っ!!」

「(そして思い知るがいいさ…)」


樺地の強力な返球を手塚も難なく返す
両者一歩も退かないラリーとなった
しかし、青学側が怪訝な面持ちで手塚を見ていた


「どうしたんだろ手塚……?」

「伝家の宝刀『零式ドロップショット』で決めるチャンスくらいあるハズなのに」


それを聞いていた桜は、目を手塚に向けたまま口を開いた


『出さないんじゃないわ。出せないのよ』


それを聞いて不二もハッとしたように目を開いた


「!!そうかっ
相手の技を一度みたら吸収してしまう樺地の前では迂闊に技は出せない!!」

「桜先輩と不二先輩の言う通りっスね
全て手塚部長と同じ球種を返してきている
河村先輩の波動球を打った時のように」


リョーマも深刻な声音でそう言った
すると、樺地が何かに気が付いたように手塚の足元を見ていた
周りも気づいて声を上げる


「み。見ろっ。さっきから手塚の奴…」

「あの場所から一歩も動いてねぇって事は…!」


「手塚ゾーン!!」


「手塚によって回転をかけられたボールは全て
引き寄せられるかの如く手塚のもとに戻っていく」

「『手塚ゾーン』…あんな神業手塚にしか出来ないよ」


しかし桜は険しい表情だ
それは、あることを意味していた





「!」





『やっぱりね………』


乾は驚愕し、桜は息を吐いた

樺地もまた、手塚と同じように一歩も動かずにボールを打っていたのだ
跡部が余裕の表情で手塚を見た


「ハマッたな手塚…勝つのは氷帝だ!」


手塚ゾーンまで吸収した樺地に桜は苦い顔を浮かべた
反対に跡部は楽しそうに笑う


「樺地は純粋であるが故
相手の技を見ればそれを吸収して使いこなす事が出来る
樺地にとっては相手が強かろうが弱かろうが関係ねぇ
むしろ強ければ強い程…こっちにゃ好都合だぜ!

自分自身と戦いな…手塚」


樺地の強さに、誰もが驚いた
氷帝は勝利を描き、青学は敗北の文字がちらつく

しかし、ボールを正確に返す手塚は冷静だった
そして、治療の為行った九州での出来事を思い出していた




九州回想編
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