頂を目指す二ノ姫X
□氷帝の黄金ペア
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「構えろ長太郎!!来るぞ、大石の十八番…」
「出たぁーっムーンボレー!!」
大きく弧を描いたボールの軌跡
しかし海堂が叫んだ
「いや、まだ決まらねぇ!!」
「奴には…」
「(俺のダッシュで攻めに変えてやるよ!)どらあ!!」
宍戸が猛然とダッシュし、ボールに追いついた
しかし宍戸は舌打ちをし苦い顔をする
ボールはネットを越さなかったのだ
しかも、そこにはちょうど菊丸がいて、コートに手をついて一回転する
桜は嬉しそうに頬を緩めた
「フーッ、危ない危ない」
『英二も頼もしいわね』
「《ゲーム青学4−3!》」
青学が活気に包まれるが、宍戸は冷静だった
鳳にボールを渡しつつ言う
「構うな長太郎。今のゲームは忘れろ
お前のサーブだ。アレいけ!」
鳳のスカッドサーブは、関東大会までは弱点があった
右サイドを狙おうとすると打つ瞬間右手をこねるのだ
その鳳の癖を利用してセンターに寄れば、ネットさせる事ができる
しかし大石はセンターに寄ってはいたが、分かっていた
その瞬間、凄まじい速さでボールが駆け抜ける
「(やはり克服していたか……)」
桜が言わずともすでに予想はしていたから、驚きはなかった
できれば克服していてほしくはなかったが
宍戸はふと桜を見て言った
「…それに今までよりも速いぜ。ネオスカッドサーブは!!」
鳳のサーブは乾が叩き出した212km/hを越え
215km/hと大会最速記録を打ち出した
ゲームカウントは4−4
実力は両者拮抗していた
そして遂に6−6でタイブレークへ突入
熱戦と昨日の雨による湿度の高さにコートサーフェスは蒸し風呂状態と化し、
選手達の体力は限界に来ていた――――――ただ1人を除いては
『(…………まだ、あんなに元気なのね)』
「大石―っ勝負はこっからだね…
ダブルスの無限の可能性見つけてやろうぜ!」
他の3人とは異なり、余裕そうな表情の菊丸に桜は目を丸くした
汗も少なく呼吸の乱れもそれほどない
『一番動いてるようだったのに…』
忍足と向日もまた驚いていた
しみじみと口を開く
「菊丸も自分の欠点を克服してきたという事や…」
「けどそんな短期間で宍戸や長太郎以上の持久力がつくとは考え…」
「いや……菊丸の体力を
そして全てを把握しコントロールしている奴が一人おるやろ」
「(ちっ。そう言う事かよ)」
大石が菊丸の体力配分、なおかつゲームメイクをしてきたのだ
それには向日も、宍戸も納得せざるを得なかった
大石のテリトリーにより、後ろを自由に動く菊丸がロブを打つ
「(抜かせません!!)」
「と、届くぞっ!?」
「せいっ!!」
ジャンプした鳳がロブを打ち返す
それを読んで菊丸が走り込んでいた
「ほいっ!!」
「《1−0青学!!》」
タイブレークを先制した2人
桜はゆっくりと息を吐いた
すると後ろで乾が口を開いた
「本来ならば右手首がまだ完治していない状態で試合に出るなんて無茶はしない慎重派の大石が、
自らの判断で桜に志願した。そうだね」
『……ええ』
「このダブルス1だけは負ける訳にはいかないと」
「比嘉中戦での英二のゴールデンペア復活へのラブコール
そして…昨日の誰かさんの試合が彼の責任感と魂を奮い立たせたんだろうね。きっと…」
『フフッ。そうね。秀も一時とはいえ青学の部長を立派に務めたからね』
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