頂を目指す二ノ姫X

□氷帝の黄金ペア
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試合は拮抗を続け、3−2で青学リード
しかし続いて鳳のサーブで3−4と逆転を許してしまう
桜は唇を引き結び目を細めた


『(次の英二のサーブを1本ブレイクすれば流れは確実に氷帝になる
逆にブレイクできなければループしちゃうわね…
どちらにしても両方にかなりのプレッシャーになるわ)』

「(見せてないけど大石の体力も限界にきている
俺達を信じて賭けてくれた皆の為にも………)」


「《ダブルフォルト!!》」



しかしここ一番という所で菊丸がネットに引っかけるというサーブミス
5−3と点差が開いてしまった
落ち込む菊丸だが、彼の肩を大石が叩く


「ドンマイ英二!コース・スピード共にいい感じだ!
落ちついて今の感じでいこう!」


大石の柔らかい声のフォローに菊丸も気分を落ち着けた
次のサーブはうまいコースで向かっていき、青学のチャンスボールだ
大石が打ち返そうと走る。しかし





「《6−3氷帝マッチポイント!!》」





体力の限界か、大石までもがミスをしてしまった
呆然とする大石に桜は心配そうな顔をしたが、すぐに引っ込めた
菊丸が大石の肩を突き、振り向いた大石の頬を指で突いたのだ


「ダッシュ・ショット共にいい感じだ…よん!
落ちついて今の感じでいこう!!」


桜はクスッと笑った
どこかで聞いたことのあるセリフだ
大石も菊丸にジト目を送った


「英二…また俺のセリフ盗んだな!」

「え〜っそう!?偶然偶然!」

「宍戸さん……」

「ああ。あいつらこの窮地で笑ってやがる!」


それは、余裕の表れでも、ましてや諦めの境地というわけでもない
気負うことなく、最後の最後まで試合を楽しむ
彼らの気持ちの表れだった

しかしマッチポイント
追い詰められていることに変わりはない


「決まりや……な」

「ああ。宍戸のサービスゲームとはいえ…
2本連取する事は今までのゲームを見てもまず不可能だ」

「でも粘ってきますよ。多分……」

「なんかワクワクしてきたーっ!!」


忍足、向日、日吉、ジローが言う
跡部は桜と手塚を横目で見て言った


「決めろ!」

「ウルセー跡部っ!!言われなくても一球で……






決めてやんよっ!!






気迫と共に宍戸がサーブを打つ
それを菊丸返し、宍戸がドロップショットを打つ
それを読んでいた大石の指示で菊丸が打ち返す
上がったボールを鳳が渾身の力でスマッシュするが、大石が根性で返す
どちらも一歩も退かないラリーが続いていた

宍戸と鳳はラリーの中、大石と菊丸の息が合ってきていることに感嘆し、
そして、2人と試合が出来たことでさらに強くなれる事に感謝していた

そして同時に、勝利を確信していた


「(止めだ!)」


その瞬間、桜はハッとして体を起こした
跡部も目を見開く
信じられない気持ちだった
空気を震わす、この感覚


「バ、バカな、あれは……」

『嘘……まさか……』






「ヤツら、同調(シンクロ)しやがった」






大石と菊丸の只ならぬ雰囲気に鳳は呆然とした
しかし宍戸が彼を叱咤するようにボールを打ち返す


「(何だ!?掛け声やアイコンタクトも無しにコイツら…)」


宍戸の打ったボールに2人が同時に詰めていた
しかも、何も言葉を発さずに、静かに、菊丸が打ち返したのだ
拳を合わせ、後ろを向くのすら無言である

これが、同調(シンクロ)だった


『(まさか……こんなところで……)』


桜は口元で掌を合わせ、目は大石と菊丸を凝視していた
あと1点で勝利が決まる宍戸と鳳は冷静で、鳳が上手くポーチに出て打ち返した
しかし次も大石と菊丸が同時にスイングした
どちらが打つのか観察するが


「(よ、読めない!!)」

「あれが同調だ」


桜は同じく驚いている榊の言葉を耳にし、息を吐いた
そして呆気にとられている青学陣にも聞こえるように口を開く



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