頂を目指す二ノ姫X

□氷帝の黄金ペア
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『絶体絶命のピンチにのみまれに起こりうるダブルスの奇跡
自分達でやろうと思っても、まず出来るものじゃないわ』

「窮地にこそパートナーを信頼し、どこまでプレーできるか
それによりパートナーの動き・思考・息づかいまでもがシンクロし、
次にどう動くのかお互い手に取る様に分かってしまう
ダブルスの世界のトッププロは言う……






シンクロなしにダブルスでは世界は獲れぬと






まさか中学生の大会で見ようとは…」






それほどまでに、凄まじい光景だった
点差をすぐさま詰め、同点にした2人の動きはまさに一心同体
しかも次には逆転していた


『(……やってくれるわ…2人とも……)』


しかし次のサーブは鳳で、2本のネオスカッドサーブを決めた
これにより氷帝が再び王手をかける
しかし忍足は彼らの表情に苦い顔をした


「アイツらの顔見てみぃ……なんや逆に追い詰められてるわ」


王手をかけているのは氷帝
しかし勢いに乗っているのは青学だ

最早シンクロを果たした大石と菊丸を止めるのは不可能とまで思われる
しかし宍戸は歯を食い縛り心の中で吠えるように言った


「(俺達は勝って跡部に繋げなきゃならねーんだよ)」


彼らの負けで青学の勝利が、氷帝の負けが決まる
だが、それだけではない
宍戸が鳳とダブルスを組むきっかけは、跡部と、桜の言葉だった
それは正レギュラーから落とされてすぐ、跡部にがむしゃらに試合を挑み、負けた時の事















「……チ……クショ………」


コートに倒れ込む自分の、なんと無様な事か
自分が情けなくて、宍戸は顔を腕で覆った
すると、跡部が言う


「バーカ。てめぇはもう終わってんだよ」


グッと宍戸の喉が締まる
しかし、跡部は続けてこう言った


「……ただダブルスでなら、てめぇの努力報われるかもな」


視線の先、そこには鳳がいた
跡部の思ってもいなかった言葉に宍戸は呆然とする
跡部はクルッと踵を返し、おもむろに言った


「……桜が言ってたぜ
てめぇはきっと戻ってくるってな」







彼にはきっと、心強いパートナーが出来る
だから心配ないわ。強くなって戻って来る








「!」

「それを聞いた時、俺様は確信した
宍戸、てめぇにこの先シングルスでの未来はない
だが、ダブルスなら道があると
てめぇがダブルスに転向するなら、氷帝で生き残れる可能性があると」

「……ダブルス…」

「だが、ただ誰かと組んで試合をすればいいってもんじゃねぇ
お前と相性がよく、かつ勝利を掴めるパートナーが鳳だと思ったのは俺様の勘だ

桜が言った心強いパートナーがあいつじゃねぇかもしれねぇ
だが、最終的にレギュラーに戻って来れるかどうかはてめぇ次第だ」

「!!」


跡部は最後に宍戸に視線だけを向けて、口角を上げた


「ま、せいぜい頑張るなら頑張るんだな」


それが彼なりの激励だったことに気づき、
宍戸は思わず空に向かって盛大に笑った
















レギュラーに戻ってくることが出来たのは、桜の、きっと何気ない言葉
そして、跡部のお節介のおかげだ
それは宍戸も痛い程分かっている
だから


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