夜空を纏う四ノ姫3

□ヴァリアーのボス
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スクアーロは爆発音とともに突っ込んできた攻撃を躱し、暴雨鮫(スクアーロ・グランデ・ピオッジャ)を開匣する
そして、向かって来る敵を鋭い太刀で切り裂いた
目の前に迫って来た霧の炎を纏った鎌を仰け反って避ける


《スクアーロ隊長ー》


間の抜けた声がし、スクアーロは眉を上げた。声はフランだ


《6弔花南に来ました―――》

「ちっ。こっちはハズレか」

《それが驚いちゃいましたよ
バカなセンパイの死んだはずの兄貴でしたー》

「!?何言ってやがる!!」

《どーも生きてたらしいんですよー。ゴッツい執事付きで》


要領を得ないフランの説明にスクアーロの眉間にしわが寄る
細かい傷が体につき始め、舌打ちを打った


「よくわかんねーが細かい話は後だ
オレも今しばらく手が空きそうには―――――ないんでなぁ」


白い制服が次々黒と赤に染まっていく
スクアーロは油断なく見渡し再び無線に口を開く


「レヴィ、ルッスーリア。6弔花だ
ベルとフランのフォローにまわれ」


しかし城にいたルッスーリアからは困った声がした


《それがこっちも忙しいのよ〜
今しがた北の方で爆発があって見張りがやられたみたい》

「何?」

《レヴィが向かってるわ
この様子じゃ敵さん数にもの言わせて一斉攻撃を仕掛けてきてるわね
怪我人もわんさか出てきたみたいだし、私も行けそうにないわ》


そう言われれば仕方がない
スクアーロは短く言う


「了解だぁ。ルッスーリア、お前は城でサポートに専念しろ
ベル、フラン!!6弔花はてめーらで何とかしろぉ」


そう叫んで無線を切った
すると、それまで黙って攻撃を仕掛けていた幸村が笑った


「随分と余裕なんだね」


胴を切り離そうと動く鎌
しかしスクアーロは軽く飛びのけると目を吊り上げる


「ナ゙メてんのかぁ!!キサマは戦闘に関しちゃ素人だぁ!!
人を殺すことにも尻込みしてやがる
そんな野郎に負けるかぁ!!!」


「………流石だね」


幸村はグッと拳を握ってスクアーロを見た
突進してくるアーロを避け、ギュッと鎌の柄を握り締める


「(…………そう。本当は、人を殺す覚悟なんてない……)」


幸村は自嘲の笑みを浮かべた
だが、同時に、その瞳の奥に覚悟の色が見て取れた


「そう。君の言う通りだ
俺は人を殺したことは無い……
いつも彼女に任せてた
彼女に押しつけていたからね」

「………?」


スクアーロは幸村の小さな声に疑問符を浮かべる

すると、幸村がおもむろにリングに炎を灯した
そして懐から取り出した、牡丹の花と剣の装飾が施されている匣に差し込んだ





「でも、それは今日までだ」





凛とした表情の幸村
その頭上に、澄んだ藍色の炎を灯した鷹が羽を広げていた


「(霧の炎を纏った鷹)
……確か、鷹は七つの属性で一つのシリーズ匣だったな」


「……まぁ、そう言われてるね
もっとも、今は八つの属性だけど
この子は俺の相棒、ダリアだ」

「!!」


意味深に笑った幸村に、スクアーロの眉間が跳ね上がる
属性が一つ増えたという事は、彼女の属性が加わったということ
厄介なものが増えたと心中で舌打ちする

それと同時に、もう一つ肌で感じていた
その証拠に肌が粟立っている


「(……雰囲気が変わりやがった………こういう奴はヤベェ)」


それはある意味、彼女を相手取る時と似ていた
幸村は10年前よりも凛々しくなったその表情を引き締める


「覚悟は出来てる。俺はもう護られるだけの人間じゃない」


フッと笑うと、鎌の炎も純度を増した
スクアーロも眉間に力を込める
しかし幸村は気にせずに話し続けた


「少し前までは神の子なんて呼ばれてたけど、今の俺は十二煉華君子蘭
彼女を護る、騎士(ナイト)だ」


その瞬間、幸村と鷹がスクアーロの凄まじいスピードで迫った


「(速いっ!!)」

「悪いけど、君には死んでもらう」


スクアーロは薙ぎ払われた鎌と、突っ込んでくる鷹を躱し、剣を振るった
それは幸村を捕えていたが、手ごたえがないことに舌打ちをした


「(チッ幻覚)」

「よそ見しない方がいいよ」


横に出現した幸村の鎌がスクアーロの肩を捉えた
血が飛び散るがスクアーロは飛びずさる
すると霧鷹が再度突っ込んできた
しかも、その翼にはいくつもの鋭い切先がついていた
炎の純度はさらに上がる


「幻惑の羽ばたき(アーラ・イルジオーネ)」


「ちぃっ!!!」


刃となった翼と剣が交錯する
スクアーロは忌々しそうに吐き捨てた


「霧の特性は構築だが、こんなのは知らねぇぞぉ!!」

「そうかい?まぁ、なんら不思議じゃないよ
霧の幻覚を構築し、それを実体のものとするだけだ
だから、こんなことも出来る」


すると、切先となった羽が飛び散り、スクアーロに向かっていった


「!!」


剣を振り、羽を叩き落とす
しかし全てを叩き落とすことは出来ずスクアーロの身体を切り裂く


「っの!!」

「はぁっ!!!」


剣と鎌が弾かれる金属音
幸村とスクアーロは互いに息を乱していた



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