夜空を纏う四ノ姫3

□次なる道
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「あくまで、一旦だ」

「え……」

「……一旦過去に帰って試練をクリアしたら、また全員でここに
未来に戻ってきてもらわないといけない
もちろん、彼女たちも」

「え…な、なんで……!!」

「彼女たちがこの時代に戻ってこなければ、白蘭サンはいずれ必ず気がつく
そうなったら、僕らの計画も全てパァだ」

「そ…そんな……せっかく過去に帰してあげられるのに…」


そんなツナに入江は苦い顔をして、だがしっかりと言った


「分かってくれ
これは白蘭サンを倒すために、絶対必要なプロセスなんだ」

「でも、いきなりそんなこと言われても…
京子ちゃんやハルになんて言ったら……」


それを聞いた赤也が大きく息を吐いた


「……なぁ、沢田。それ、何がそんなにマズイんだ?」

「な、何って……
せっかく10年前に帰れるのに、またこっちの世界に戻ってこなきゃならないなんて…」

「でもよ。それを聞いて何を思うか…
その京子とかハルとかいう奴らが何を思うかなんて、わかんねーじゃん?」

「………えっ」


赤也は再度ため息をついてツナの目を見た
その目に、ツナは背筋を冷たくさせた
どこか苛立ちを含んだ、責めるような眼だった


「アンタがそうやって言うのはよ
要はその女たちに今置かれてる状況をしっかりと話さなかったからだろ?
それは誰の責任でもなくアンタらの責任だし
それにそうやって渋るの、そいつらの反応が怖いだけなんじゃねーの?」

「!!」

「なっ、てめー聞いてりゃ勝手なことベラベラと!!
10代目の心遣いがわかんねー野郎だな!!」

「………赤也。余計なことを言うな」

「……………へーい」


獄寺がいきり立ち、手塚がため息をついて赤也をたしなめた
赤也は気の抜けた返事をしてそっぽを向く

ツナは赤也に言われた事をぐるぐると考えていた


「(……俺……………)」


苦しげなツナ
それを見かねたリボーンがツナに言った


「ツナ。今はグダグダ考えても仕方ねぇぞ」

「リ……リボーン……」

「……うん。赤也がごめんね、沢田くん」

「あ…」


眉を下げた不二がそう言ってツナに笑いかけた
謙也もツナの肩を叩く


「まぁ、確かに普通に生活しとったんなら言えへんわな」

「そうだね。色々考えちゃうと思うけど、僕らも力になるから」


そう笑う2人に、ツナも控え目に笑った
するとクロームが身を乗り出した


「…あの…骸様は…六道骸は今…どうなっているんですか…?」

「え…」

「六道骸…か……」


不二の目が開き、クロームを凝視する
入江は顔を伏せた


「………………白蘭サンの話では
骸はミルフィオーレの兵士に憑依していた所を白蘭サンの手で殺されたらしい」

「(そんな!!)」

「だが僕はそう思っていない
なぜなら復讐者の牢獄の死亡者リストに彼の名前はあがってこなかったからね
手塚くんが調べたから間違いないよ」

「ああ」

「………ってことは…」

「生きてるよ。それは間違いない…」


するとクロームが倒れた
よほど気を張っていたのだろう
支える不二の腕に縋り、安堵の息を吐いた

すると草壁が口を開いた


「ところで一つ気になっていたのですが、入江さん
あの装置の中にいるこの時代のボンゴレファミリーを出すことはできないのですか?
彼らが加わればすごい戦力になるはずです!」

「ああ……それは絶対にあってはならないことだ」


手塚が重々しい口調で言い、入江が頷いた


「過去から来た綱吉君達とこの時代の綱吉君達が同時に出現すれば
時空が壊れて世界が消えてしまう可能性がある」

「な…なんと!!」

「だからこそ僕らは君達にかけたんだ
ボンゴレリングの正式なホルダーである君達にがんばってもらうしかないんだよ」

「(俺たちに…かけた……)」


ツナは匣に目を落とした
草壁がでは、と続ける


「10年前に戻れるのであれば、そこで白蘭を倒してしまえばよいのでは?」

「それも不可能なんだ
前にも言ったが、この時代に倒すしか白蘭サンの能力を封じることはできない」

「それに、桜に一度聞いたことがあるんだ」


クロームに視線を落としていた不二が堅い声音で言った
手塚も腕を組み、装置を見上げた


「未来は、少しの変化で大きく変わる
だが過去と未来が一直線につながっている訳ではない」

「絡み合い、枝分かれして未来は形成されていく
だから、過去の一つの行いが、ある一つの未来を変えるわけじゃない」

「その全てに影響を及ぼし、最終的には、一番幸福な未来にも影響を与えるだろう
だから慎重に見極めなければならないんだ」

「……そう、ですか」


不二と手塚の真っ直ぐな目に、草壁は口を噤んだ
威圧感を感じたのだ



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