頂を目指す二ノ姫X

□王様と王子様
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跡部は余裕の笑みを隠しもせず樺地に言う


「笑い死にしそうだ…なぁ樺地」

「ウス…」

『…ほんと、楽しそうねぇ』

「けど、それだけリラックスしてるってことだね」


不二が微かに目を開いて堅い声音で言う
桜が指を組むと、跡部は前髪を掻き上げた


「もしお前に負けたら坊主になってやるよ」

「へぇ…なら俺もアンタに負けたら坊主になるよ」





「てめぇはまだ手塚の域すら達してねーだろ?」





「だから?」





『……あ〜あ。あんな約束しちゃって…』

「どっちも負けず嫌いだからな。ホント、似てるよあの2人」


大石が呆れたように息を吐く
桜も思わず肩を落とした
すると跡部がふと桜に視線を向けてきた


「……まだ手塚の域にすら達してねぇてめぇは桜の域には程遠い」

「!!」

「そのてめぇが俺に勝てる見込みはゼロだ!」

「…勝手に言ってれば。俺はアンタを倒す」


強い意志の籠った瞳が跡部を射抜く
それを真っ向から受け止めて、跡部は鼻で笑った


「フン。まぁいい。始めるぞ!」


サーブは跡部からだ
だが、いつまで経ってもラリーが始まらない
周りはやきもきするが、桜たちには分かっていた
もう2人の頭の中ではラリーが始まっていることに
そして、次の瞬間


「はあっ!!」




ドッ




「は、始まった!!」


ついにラリーが始まった
跡部の強烈なサーブをリョーマが打ち返す
それを跡部が難なく打ち込むが、
そこにしゃがみながらスライディングするリョーマ
ドライブBだ。しかし


『…速い!』


跡部がネットに詰め、ジャンプしてドライブBを打ち返した
だがそれで終わりではない
リョーマがさらにスライディングしていた






「ドライブD!!」






「《0−15》」



仁王立つ跡部の脇を新技、ドライブDで大きくバウンドするボールが過ぎて行った
先制点を奪ったリョーマだが、その表情は芳しくない


『(……景吾…わざと見送ったわね)』


その証拠に、跡部は不敵な笑みのまま言った


「違うだろ?アレで来いよ」

「跡部の奴。越前に『無我の境地』を使えと…!?」

「なんて自信だ!?」

「やだ」


リョーマはラケットを肩にかけて切り捨てる
それを聞いた跡部は低い声で言った


「フン!それなら………引きずり出してやるよ」


跡部の周りの空気が変わった
それを感じ取って桜は跡部を凝視する
ボールを上へと投げた跡部のそれに、忍足と桜はハッとした


「(あの…………サーブは…)」

『(まさか……っ)』






「はあああああ!!






くらえ、タンホイザーサーブ!!」






ボールが、ラケットを構えたリョーマの足元を一直線に転がっていく
かなりの威力に壁とフェンスを駆け上がったボールにリョーマも驚きを隠せず瞠目した
それはまさしく、リョーマのCOOLドライブと同じイレギュラーバウンド


『……合宿で見た、あのサーブ…………』

「どんどん行くぜ!」


その言葉通り、跡部はサーブだけでゲームを取ってしまった
まったくボールに触れなかったリョーマは静かに立っていた。そして


「き、来た…!?『無我の境地』!!」

『…………』

「そうだ。それでいい」






「You still have lots more to work on…(まだまだだね)」






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