頂を目指す二ノ姫X

□王様と王子様
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次はリョーマのサーブだ
リョーマは豪快に跳び上がり、渾身の力を込めてボールを打った
それは比嘉中田仁志のサーブ






「ビッグバン!!」






「(そうだ。見届けてやるぜ)」


ビッグバンをものともせずに打ち返し、跡部は笑みを浮かべた
リョーマは縮地法で移動し、ラケットを裏手に持ち換えた


『(甲斐くんの海賊の角笛(バイキングホーン)か…)』

「(それが『無我の境地』か!
無意識に様々なプレイスタイルに変化するだと?)
その程度素で出来んだよ!!」


ラケットを裏手に持ち、ぐるんと大きく弧を描くように下から振り上げる
跡部もまた海賊の角笛を打ったのだ

しかしリョーマは怯むことなく前へと走る
その構えは日吉の演舞テニス
それを軽々返した跡部は、リョーマの次の攻撃を目にした


「あ、あのグランドスマッシュは皇帝、真田弦一郎の…………」



『風林火山の「火」………!!』






「おおおおおおおお!!」






だがそれを、跡部が羆落としで返した
左手の指を眉間に置き、跡部は余裕の表情だ


「『無我の境地』…こんなものか」

「Not bad!(やるじゃん)
So let's go.(さあ行くよ)



HAAAAA!!



リョーマは今度、先ほど見た跡部のサーブ
タンホイザーサーブを繰り出そうとした
それを見て跡部が前へ出る
絶妙なタイミングで跳ね際をとらえ、コートを転がる前に打ち返した


「ああん」

『フロントフットホップ!?』

「なんて奴だ!!
左足を前に踏み込みその足でジャンプし
ライジングぎみにトップスピンをかけ攻めに転じる為の高度なステップ…
タンホイザーサーブの跳ね際を見事に……」

「桜、乾……越前も負けてないよ」


驚愕する桜と乾に不二が言う
リョーマが2人に分身しているように見えていた


「あ、あれは…!?『菊丸印のステップ』!!」

「おチビ――ッそれ俺の技ぁ〜っ!!」


次々と技を繰り出すリョーマに青学の声援に熱が入る
しかし桜は急速に興奮が静まっていくのを感じていた
それは、跡部の表情を見てしまったから


『(今のままじゃ……景吾には勝てない…)』






「もう止めだ!」






まるで桜の心を読んだかのようなタイミングで跡部が険しい顔で言った


「そんなテニスだからテメーは手塚の域に達せねーんだよ」


跡部の目が鋭く吊り上り、リョーマを凝視する



その瞬間リョーマの足元にボールが突き刺さった



リョーマは微動だにすらできなかった


「何だ。今越前の奴、全く反応すらしなかったっスけど?」

「いったい何が起こったんですか?」

「……さあ?」

「…………」


訝る桃城と乾だが、不二は生唾をのみ込み目を瞠っていた
桜も目を丸くしていた


『(……まさか…)』

「Darn it!(にゃろう)」

「越前の奴、構わず前へ出た!?」


強気なリョーマだが、跡部も不敵な笑みを浮かべたままだ


「ほうら、凍れ






俺様の眼力(インサイト)ならテメーの死角丸見えだぜ






『なっ……やっぱり!!』

「まずい。跡部には越前の死角が全て見えている!!」






「(その氷柱一つ一つがテメーの弱点だ!)」






跡部には、リョーマの死角がまるで氷柱が刺さっているように見えていた
死角に打たれてしまえばリョーマでも反応できない
氷柱が支配するそれはまさに






「『氷の世界』」






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