頂を目指す二ノ姫X

□王様と王子様
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それは、氷帝の全国行きが決まる直前、
跡部が単身立海に乗り込んで完成させた技だった
幸村から電話が来た時のこと
真田を相手に完成させたそれは、あの真田を敗北させたかもしれなかった技だ

桜は険しい表情を浮かべた



「恐らくあのままやってたら、真田は負けてたよ」



『(精市にあそこまで言わせるだけのことはある……マズイわね…)』


リョーマは無我の境地の副作用で体力をかなり消耗していた
そこに跡部がリョーマの死角を突き畳み掛ける


「ほうら凍れ」


人間はどう足掻いても死角に反応すら出来ない
跡部の死角への攻撃に、リョーマは為す術がなかった



「《ゲーム跡部3−0!!チェンジコート!!》」



戻って来た汗だくのリョーマにベンチを立ち上がる
息が上がっているリョーマをベンチに促せば、彼は倒れ込むように仰向けになった


「跡部は正確に越前の死角を突いてきている。これでは勝ち目が無い」

「死角を突かれてはどんな動きのいい選手だろうと反応出来ない」

『リョーマ……』


桜は何も言えず、リョーマを見下ろす事しかできなかった
その様子を見ていた忍足も冷や汗を流していた


「ズタボロやん」

「手も足も出ねぇってのはこう言う事だな……同情するぜ」

「相手の死角を完璧に見抜いてしまうなんて不可能……」

「アイツ。不可能を可能にしやがった」

「お、おい見ろ……」


宍戸と鳳がそう言った後、向日が叫んだ
リョーマがまた、無我の境地で挑もうとしていたのだ


「強いじゃんアンタ」

「体で教えねえと分からねえタイプだな」


リョーマは今度は立海、柳のかまいたちを繰り出した
しかし跡部の前には無意味だった


「(クソッ。反応できない)」

「ヤベェーじゃん。負けちまったら越前ボウズだぜっ!!」

「やな事思い出させるなよ…」

『じゃあ言わなければよかったのに』


負けず嫌いはこういう時困り者だ

果敢に攻めるリョーマに菊丸が言う


「おチビ。まだ無我の境地で攻めて……
も〜〜〜っ負けず嫌いにも程があるって!」

「でも英二先輩。今までより無我の時間が長くなってないっスか?」

『リョーマは…「無我の境地」をコントロールし始めて来ているわ』


さまざまなプレイスタイルを繰り出すリョーマ
だが跡部はそれをものともしない

そもそも無我の境地とは、
脳裏に焼き付いた様々な選手のプレーを身体が直接反応し、
ランダムに放出する事で予測不能な動きを実現している


「(だがそんなモノは『氷の世界』を会得した俺様の前では何の意味もなさない
どんな技、どんなプレースタイルで来ようと死角(デッドアングル)があるんだよ)





そうだ。『氷の世界』に跪いてろ





またもや死角をつく跡部
リョーマは疲労にコートに膝をついた

すると、リョーマは驚くべき行動に出た


『リョーマ!?』

「なんだアイツ。目を閉じちまいやがった!」

「とうとう観念したとみえる!!」

『(……ううん…まさか……………)』

「(フン。何を企んでいる
だがどう足掻こうがテメーの死角は―――丸見えだぜ)」


目を閉じたリョーマに跡部は訝るもリョーマの死角を狙う
それもまた反応もせず決まると思われたが






「返したっ!?」






ラリーを始めたことに会場が驚いた
桜もまた、リョーマが始めたそれに目を丸くする


『…………あれは……』

「(お、おのれーっ!!)」








真田との試合を中断された跡部は、背を向ける彼に声をかけた
聞いてみたいことがあったのだ


「真田よ。テメーらが使う『無我の境地』ってのは何でもやれんのか?」

「………一つだけ未だ出来ぬ技がある……」


それはボールを自分に引き寄せるように回転を掛ける高等技術
彼がやってのけた、神業の様な技






「手塚ゾーン…………だ」







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