頂を目指す二ノ姫X

□王様と王子様
5ページ/9ページ




「アイツ今僅かにボールの軌道をずらして…」

「完璧では無いがあれは『手塚ゾーン』」

『………アイツとの…練習の成果、ね………』


跡部の狙った死角からボールがリョーマに引き寄せられる
死角からずれたことによって、リョーマのラケットがボールを捉えていたのだ






「まだまだ青学は負ける訳にはいかないからね」






「(ここでも邪魔するのか…………手塚ぁーっ!!)」






跡部が苛立ちを心の中で叫ぶ
それほど、この状況が信じられないのだ
乾も驚愕の表情で口を開いた


「跡部は越前の死角が全て見えているのに当たらないんだ…『手塚ゾーン』によって」

「教えたのか?」

「いいや。桜、お前も教えていないな?」

『ええ』

「えーっ!!桜先輩も『手塚ゾーン』出来るんですか!?」


周りに驚かれ、桜もえっ、と目を丸くした
手塚が眉間にしわを寄せる


「見せなかったのか?」

『そう思ってたけど、タイミング無くてそう言えばやらなかったわね』

「そうか。元々あれは桜が使っていたものだ
それを俺がより回転数を増やしてあの形を作った」

「そ、そうだったんだ……」

「マジ桜って何者?」


びっくりしっぱなしの彼らに桜は苦笑した
しかし、『無我の境地』で『手塚ゾーン』を打っているという言葉を聞いて、否定の言葉を紡いだ


『よく見て。もうリョーマは「無我の境地」じゃないわよ』


リョーマはただ目を瞑っているだけだった
それでも、死角を突く跡部相手にボールを捉えている


「あの『手塚ゾーン』はボールに回転を掛け、相手の打球を自分の方に導く高等技術
脳裏に焼きついたイメージだけでは到底出来っこないあの微妙な回転を操るには…………


手塚の様に、かなりの経験が必要だ」


「《ゲーム越前1−4!!》」


「《ゲーム越前2−4!!》」


「《ゲーム越前3−4!!》」



立て続けにゲームを取るリョーマ
跡部にも困惑と焦燥の色が見え始める
手塚は目を瞑り、ゲームを奪うリョーマを静かな目で見ていた
彼に、違う誰かを重ねるように


「越前は俺の技を模倣してはいない
おそらくある人物と毎日戦い、経験を積んできたのだろう」

「ちっ」


跡部がロブを上げてしまう
そこにリョーマがジャンプした


「ボウズは…アンタだっ!!」

「バーカ。いつまでも調子に乗ってんじゃねーよ!!」


跡部がリョーマのスマッシュを強引に返した
周りにはそう見えていた

しかし忍足が声を上げる


「…いや違うで」

「あれは…」


跡部のラケットがコートに落ちる
それは跡部の技






『破滅への輪舞曲…』






「《ゲーム越前4−4!!》」





ついに、リョーマは跡部に追いついた
0−4からの怒涛の反撃だ
青学の誰もが、小さなルーキーにすべてを託していた


「おチビ…」

「越前…」

「勝ってくれよ越前」

「いけっ越前!」

「越前」

「越前…」

「頼むよ。青学を…」


「さあここからだぞ越前!」


『頑張って…リョーマ……』


「ちいース!」




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ