頂を目指す二ノ姫X

□無我の奥
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橘はそれを聞いて口角を上げた


「……で、お前はどの扉ば開けて踏み込んだとや?」

「バカ言え!足が竦んで開けるだけで精一杯ばい」


千歳の言葉に、四天宝寺の部員が黙り込んだ
彼の実力は周知の事実
その彼がそこまで言うほど、無我の奥の扉には強大な力がある


「(ばってん今なら……桔平が相手なら)」

「(コノヤロウ…待っとったって訳や)」


千歳の表情に橘もニヤッと笑った
どこか決意を滲ませた表情に、橘が吠えた


「遠慮いらんばい。来んや!!」

「(待っとったばい!無我の奥に踏み込めるこん瞬間ば!!)」


その瞬間、桜の腕が粟立った
彼の頭がどこか光を纏っているように見えるのは決して見間違いじゃない
彼は、その扉に入ったのだ


『(………あれは…)』






「7打目……」






ぽつりと呟くようなそれの意味が分かる者は、この場ではきっと桜だけだ
桃城も菊丸も、チームメイトである遠山にも白石にも分からない
橘は怪訝に思いながらもボールを宙に放った


「返り討ちにしてやっけん!!」


鋭いサーブを千歳が返す
それを橘がパッシングすれば、千歳もすかさず打ち返す
そして橘のあばれ獅子が出るかと思えば、ネットを緩やかな弧を描くボレー
しかし千歳も負けじと拾い、なおかつ神隠しで返した


「遅か!!」


それを橘が強烈なスマッシュで打ち返すが






「その位置での大振りは入らんばい。今ので7打目ばい」






誰もが息を呑んだ。千歳の言った通り、7打目で決まったのだ
偶然とするのは簡単だが、それにしては千歳の態度が気になる
横からの視線に桜は手塚を見上げた


『……何?』

「今の奴には試合のイメージが一瞬にして見えている。そうだな?」

『それ、聞く意味あるかしら?』

「……………そんな事が」


不二が信じられない、という声音で言うが、それは当然の反応だ
しかし、それが事実だ
桜は手塚から視線を外し、千歳を見た


『(……やっぱり、あれは私と同じ……)』

「桔平……次は6打目で決まっけん
これが3つの扉のもう1つ。神崎さんば入った扉………







『才気煥発の極み』







橘は千歳の宣告を受けて目を剣呑に吊り上げ、ラケットを握る手に力を込める


「(次は6打目で決めるてや…断固阻止!!)」


しかし千歳のスマッシュがコートに突き刺さる。それは


『……6打目……』

「こ、これが…『才気煥発の極み』」

「メッチャ凄いわ
千歳の言いよった打数でホンマにポイント決まってるわ!」


遠山は興奮したように喜色の色を混じらせて声を張り上げた


「おお―――っ何でや千歳――っどーなってんのや?」

「やっぱあないにえげつ無いモン隠しとったでぇ」

「才気煥発…?何のこっちゃ?」


謙也は思わず首を傾げる



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