頂を目指す二ノ姫X

□無我の奥
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不動峰VS四天宝寺の試合は四天宝寺有利で進んでいた
遠山に解放された桜は手塚たちと共に試合を観戦していた

シングルス3に続いてダブルス2の神尾・石田も
忍足謙也・石田銀相手に橘が纏っていた猛獣のオーラを発揮し挑むも敵わず棄権負け
もう不動峰にはあとが無い

シングルス2に出て来たのは不動峰の部長、橘桔平と千歳千里
奇しくも元九州最強、九州二翼と呼ばれていた2人の試合だった
千歳は橘に口を開く


「久しぶりたい桔平
こっちは大阪、お前は東京…
まさかこぎゃん形で再びお前とタイマンはるっとは思っとらんかったばい」

「目は…治ったとや?」

「お蔭さんでな」


その会話に、桜は拳を握った
それは因果なのかもしれない

すると、周りから驚きの声が上がって顔を上げた






「ア、アイツも『無我の境地』を!?」






「あいつが真田の言ってた九州二翼の千歳」

「『無我の境地』を使いこなす男!」

「でも何故大阪に…!?」


オーラを纏う千歳は、不敵に橘に笑いかけた


「桔平…リミッターば外して本気で来んね!」


その千歳は口を噤んだ
橘が凄まじい目つきで千歳を見たからだ
その凄み、威圧感に周囲が呑まれていく
それもそのはず、彼らは九州二翼として繋がりがあるだけの間ではなかった

橘は千歳の右目を負傷させ、彼から右目の視力とテニスを奪ってしまった
そのけじめに、橘も部を退部した
さらに親の転勤により九州から離れたのだ
だが千歳が大阪でテニスを始めたと聞き、彼は不動峰で新テニス部を立ち上げた
そして今、その2人はネットを挟んで存在していた


『……九州二翼が相対することになった…か』


そして、橘はけじめを大事にする男だった
試合早々の千歳のスマッシュを橘は自らの右目に受けたのだ

その後の試合展開は息もつかせぬものになった
千歳のボールが消えたように見える技、『神隠し』。橘の『あばれ獅子』
どちらも全く引かない攻防だ

そして、千歳は唐突に話し始めた


「桔平……『無我の境地』と『猛獣のオーラ』
己の奥底に潜む能力ば最大限に瞬発的に引き出す面では似とるばい
ばってん…『無我の境地』の奥には3つの扉があっとたい」

『…………』


桜がスッと目を細めた
リョーマもジッと千歳に視線を向ける


「『無我の境地』は知っての通り
頭で考えて動くとじゃなくて身体が実際体験した記憶で無意識に反応するもんたい
ばってんそん反動としてもの凄い体力の消耗が一気に身体に襲い掛かってしまう副作用もあっと」


関東大会決勝の立海戦
真田に対してリョーマが無我の境地を使った時
スタミナがあり、かなりのハイテンションでも試合が長時間出来るはずのリョーマ
その彼が疲れ切っていたことを考えると、その副作用はかなり強いものだ


「俺は無我に出会ってからそれば長年研究し続けたけんね
科学的に分析すっ為に大学病院で脳波ば測定し、
時には自分の肉体ば限界以上に追い込んだりも…」

『(………凄い……)』

「そして俺は…『無我の境地』の奥の3つの扉に行きついたったい」

「……!」


すると千歳が指を指した
その先に居るのは手塚だ


「『百錬自得の極み』…3つの扉のうちの1つたい」


無我の爆発的に溢れるパワーを左腕1本に集め、
威力・回転数などを倍返しで返球し、
更に無我の副作用の疲労も最小限に抑える
それが百錬自得の極みだ
河村と桃城は目を瞠った


「百錬自得はやはり無我だったんだ」

「(この人はもうすでに踏み込んでいたんだ
『無我の境地』の奥にある3つの扉の1つに……………)」


そして次に、千歳は指をそのまま横に向けた


「んで、神崎さんば入った扉もある」

『…………』

「ええーっ!!」

「桜先輩も無我の境地の奥の扉に!?」

「…まぁ、無我の境地を使いこなせるって話が出たぐらいだからね」


不二に曖昧に微笑み、桜は口を噤んだ



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