頂を目指す二ノ姫X

□オーダー
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「桜、行くぞ!!」







『…ぇえっ!?』


唐突に名前を呼ばれ、桜は思わず声を上げてしまった
いつもの彼女とはまた違った反応に手塚が微かに目を丸くする
柱の陰から出て来た桜に千歳も笑っていた


「凄か声したばい。バレてないこつ思っとったと?」

『…ええ……』

「何かあったのか?いつもと違って分かりやすかったぞ」

『………本当に?』


はぁ、と息を吐いて手塚の横に足早に向かう
すると、桜の背中に千歳が声をかけた







「神崎さん。俺は君が何者か、知っとるばい」







『!!』


思わず振り返れば、千歳はその声音同様、真面目な顔をしていた
手塚も動きを止めて桜と千歳を見ていた


『………どういう意味』

「正確には、“憶えとる”と言った方がいいかもしれんばい
……あの夜のことも含めて」

『!!!』


その途端、桜の手先から一気に血の気が失せた
急激に寒くなり、肌が粟立つ
それに気づいて手塚が桜を覗き込んだ


「………桜?」

『………………っ』


胸を押さえるようにする桜に、手塚は本格的に焦った
まさか、発作が起こったのか

千歳はその様子を見て痛ましげに目を瞑ると踵を返した


「……すまん。試合前に余計な事言ったとたい」

「……おい、千歳…」

「おそらく金ちゃんは対青学戦はシングルス1で出るんじゃなかかな。そんじゃ」


千歳はそう言って手を振って去って行った
手塚は桜の腕を掴んで肩に手を乗せる


「……桜。病院に」

『大丈夫……違うの……発作じゃない…』

「だが」

『本当に、発作じゃないの
次に発作がきたら絶対に病院に行くって秀と約束したから』


桜が手塚の腕を掴み返し、懇願するように言った
手塚は深く息を吐いて手を離した
が、次の瞬間桜の膝の裏に腕を入れ、上に掻っ攫うように持ち上げた
突然の浮遊感に桜は咄嗟に手塚の首に腕を回した


『く、国光!!いきなり何!?』

「お前の言いたいことは分かった
だが無理をさせる訳にはいかないからな」

『え、でもちょっ……お、降ろして』

「駄目だ。暴れるな」


手塚から体を離して降りようとする
だが、彼の左腕がしっかりと桜の背中に腕を回している
身動きがとれず、桜は観念して手塚に寄りかかった


『………重かったら降ろしていいから』

「平気だ」

『………みんなの所に戻る前には降ろして』

「…ああ」


手塚は腕に力を込めて歩き出した




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