頂を目指す二ノ姫X

□オーダー
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桜は歩きながら携帯のボタンを慎重に押した
数度のコールの後に出たその人は、不機嫌そうな声で開口一番言った


「“てめぇ…今度は何の用だ”」

『相変わらず酷いわね、仁』

「“うるせぇ”」


桜は肩を竦めてからかうように言う
案の定亜久津は人を殺しそうなほど低い声で桜を威嚇した

だが、思わずニヤけてしまう
名前を言う前に、亜久津はこれが桜からの電話だと分かった
それはつまり、桜の電話番号を登録しているという事だ
勿論、覚えていたのかもしれないが、それは考えないようにする


『(全く、素直じゃないんだから)』

「“……何の用だっつってんだろ”」


苛立った声音に桜は肩を竦めた


『はいはい。それがね、さっきうちが準決勝に進むことが決まってね』

「“だからなんだ”」

『次の対戦相手に、凄いパワープレイヤーがいるの』

「“…………”」


黙り込んだ亜久津が何を考えているのかは分からない
だが、きっと桜と同じことを考えているはずだ


『タカさんの望みもあるし、事実青学に彼に対抗できる選手はいない
だから私の予想がつく限り、タカさんに相手をしてもらうことになる』

「“それを俺に言って、何がある………”」


低い声だ。携帯では聞き取りづらいほどの
誰もが背筋を震わせるその声に桜は怯まずに口角を上げた


『タカさんの応援に来ない?』

「“ふざけんな”」

『ふざけてないわよ。きっとタカさんも仁が来てくれたらうれしブツッ
……あら、切れちゃった…』


仕方ないな、と息を吐き、それでも桜は表情が緩むのを押さえられなかった
何だかんだと言うが、彼が本当は優しいことを知っているから






それは永い年月を越えて
再び巡り会った
その時は刻一刻と近づき
咢を向ける












「……話とは何だ?試合前だ。手短に願おう」







『ん?』


突如聞こえてきたその声は聞き覚えがありすぎる
咄嗟に何故か柱の後ろに隠れてしまった桜は息を殺していた
そこにいたのは手塚、そして千歳だった


『(何でこの2人………?)』

「数十年前に1人だけ『天衣無縫の極み』ば開いた人物…
アンタんとこのスーパールーキー越前リョーマの父…
元テニスプレーヤー越前南次郎…またの名をサムライ南次郎たい」

『!』


ズボンのポケットに手を突っ込み腰を屈めた千歳は、表情を変えない手塚に切り込んだ


「そいでアンタは…その息子である越前リョーマに期待しとっとじゃなかとや」

「話はそれだけか?失礼させてもらう」

「残念ながら『天衣無縫の極み』に今一番近かつは…







遠山金太郎







四天宝寺のスーパールーキーだ!







断言した千歳に手塚が目を向ける
千歳は不敵に笑った


「サムライJr.じゃなかとよ」

「……!」


手塚は口を引き結んだまま千歳に背を向けた
だが一歩足を踏み出すと止まり、声を張った



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