夜空を纏う四ノ姫2

□10年前
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彼の部屋には、なぜか金髪の男が座り込んでいた
見覚えのないその男に入江の顔色は恐怖の色に染まる

しかし男は気にした様子もなく、人懐っこい笑みを浮かべた


「自分のおかんに聞かんかったんか?
自分に用事があって来たんや」


忍足謙也や、よろしゅう

そう和やかに挨拶をする男に
入江も思わず入江正一です、よろしく、と答えていた


「宍戸亮は知っとるやろ?あいつと友達やねん」

「えっ、宍戸さんと?」


それを聞いて入江は若干緊張が解けたようだ
「それじゃあ知ってる?」という問いに謙也が頷けば、入江は安堵の息を吐いた
それを見て謙也はにっと笑ってポケットから封筒を取り出した



表には"入江正一様"の文字



「これに見覚えはあらへん?」

「え………ああっ!!それは!!!」


指をさして驚く入江に謙也はそれを差し出す
入江は不審そうな目でそれを見た


「それ……また………貴方がこの前もこれを?」

「この前は知らんなぁ。今回これを頼まれたんは偶然やし
せやから中身も知らんねん。ただ」

「ただ?」

「自分を手伝ってほしいっちゅーのは言われたけどな」


そう言って笑う謙也に入江は安心したように表情を綻ばせた
意を決して封筒の文字を確認する


「……間違いなく、この字は僕の字なんだよな………
これを書いた人って……誰なんですか?」

「………それは知らんねん
けど……大方の予想はついとるんとちゃう?」

「…………」


入江は恐々と封筒から紙を取り出す
震える手で持ち、文字を目で追った


「……“一週間後に、並盛神社の縁の下に
10年バズーカを置いてくること
さもなくば……





未来は………ない……!!
”」





「……未来はない……か」


謙也は彼に似合わない渋い顔をした























「…………そう……………あいつが日本に着いたのね」

「《ああ。それから、青色のおしゃぶりのアルコバレーノもな
おそらく、第1の試練はあいつだ》」

「理解したわ。引き続き頼むわね」


黒いシルエットの影が身じろぎした
その一瞬月の光に照らされ、おしゃぶりが露わになる

黒色のおしゃぶりを下げた赤ん坊は、携帯を切るとスッと目を細めた
その背中に、妙齢の女性が声をかける


「どうしたの?」

「いえ。ただ、早く終わらせたいと思っただけ」


広がる夜空を見つめるその目には、苦悩の色が見て取れた





→Un afterword
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