頂を目指す二ノ姫X
□聖書VS天才
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ボールは、ネットに当たって落ちた
カウントは15−40で不二のブレイクチャンス
乾はこの展開に打ち震えた
「データだ………こんなデータが一度に集められるなんて。フフフ」
『ホントにやってくれるわ…
まさか試合の中で、新しい技を作るなんて』
桜は息を吐き、目を細めた
この土壇場での行動には感嘆しかない
白石も驚きに目を丸くした
「(ネットを超さへんやて……そないアホな話あるかい!!)
これならどや!!」
「ウマい部長、ロブや!!」
しかし、まるで引き寄せられるようにネットに落ちていった
誰もが目を瞠る光景がそこにあった
「《ゲーム不二3−5!!》」
白石は信じられない気持ちで果敢に打ち込む
だが、そのどれもが超回転の掛かったボールによって失速してしまう
絶対にネットを越さなかった
どんなに速く打っても、どんなに高く打っても結果は同じだった
それは、不二が見せた明らかな覚悟だ
『2人の技術はほぼ互角…
けれど周助がここまで追い詰められたのは、足りないものがあったから』
「足りないもの?」
『ええ。周助に足りなかったもの。それは勝利への執念』
勝敗に執着が出来ない
それが、彼のもっとも欠けているもの
だが、今の彼は違う
『貴方たちにも負けずとも劣らない、勝ちへの執念があるわ』
「不二先輩無敵じゃん…」
「す、凄い。これが……不二先輩」
「不二。これがお前の答えか」
手塚もまた、彼の成長に目を瞠る
こんなこと、誰も想像していなかった
けしかけたリョーマも生唾をのみ込む
そして、不二は0−5から5−5と、ついに白石に追いついたのだ
「うおお――っやったついに追いついたぞぉ!!」
『0−5からここまで………(でも、油断はできないわね…)』
目を細め、桜は白石をじっと見た
彼は本当に侮れないのだ
四天宝寺はこの不二の快進撃に絶句していた
自分たちの部長が負けるのだと
謙也はそんな部員に声を張り上げる
「どアホ―――!!!まだ追いつかれただけやっちゅーねん!」
「《15−0!!》」
「ホラ……逆転やでケンヤ君……」
「………」
これには謙也も険しい表情で黙るしかなかった
だが、小春と一氏がそれに待ったをかけた
「オドレらよう見てみい」
「蔵リンのネットに掛かる球の位置や…」
「「「!」」」
「徐々に上がってきてる」
「白石ぃはまだ諦めてへんで」
遠山の言う通り、白石の目はまだ諦めていなかった
必死に百腕巨人の攻略を試みていた
「(回転や……奴の回転を打ち消す回転をかけるんや……)」
「《40−0!!》」
「ホンマに段々に上に来とるわ!!」
あと少しでネットを超すというところまできたボール
白石は40−0だというのに落ち着いていた
「ちゃうちゃうとちゃうん……」
「怖いなぁ…」
『……やっぱり、四天宝寺で一番注意すべきは千歳くんよりも……蔵だったかな』
白石の打球はまだネットを越さない
だが、確実に上がってきている
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